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「縄と糸」のようにはいかなかった「尖閣とTPP」取引

TPPの交渉は進まず、「リバランス」戦略は挫折へ

2014年4月28日(月)

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 オバマ政権は2011年に「アジア回帰」を宣言。昨年からは「アジア・リバランス(再均衡)」と表現を改めて、アジア重視への転換を進めている。今回の訪日は、オバマ大統領自身が「リバランス」に向けて強い政治力を発揮できる最後のチャンスだった。11月の中間選挙で民主党の敗色は濃い。その後の残りの任期2年はレイムダック化が加速し、もはや大胆な政策は打ち出せなくなる。

 それだけにオバマ大統領は今回の訪日で、「環太平洋経済連携協定」(TPP)に関する日米合意を目指していた。日米軍事同盟が、安全保障面におけるリバランスの柱ならば、TPPは経済面におけるもう1本の柱である。

リバランスにはAbeの力が必要

 オバマ大統領は軍事面において「尖閣を含む、日本の施政下にあるすべての領域に日米安保条約第5条は適用される」ことを大統領として初めて明言。さらに日米共同声明にもその旨を明記した。

 「確かにこれまで国務、国防各長官は尖閣防衛に言及している。しかし大統領がこうした発言をするのは初めてあり、これが持つ意味は大きい」(テイラー・フラバルマサチューセッツ工科大学教授)
("U.S.-Japan Joint Statement: The United States and Japan: Shaping the Future of the Asia-Pacific and Beyond." The White House. 4/25/2014)
("Obama says U.S. will stand by treaty obligations to Japan," Juliet Eilperin, Washington Post, 4/24/2014)

 米国にとってこれは大きな譲歩だった。なぜなら尖閣の領有権を主張する中国と米国は「新型大国関係」の構築についてお互いに認め合っている。その中国に対して、米国の大統領が「尖閣で中国が武力を行使するようなことがあれば日本のために米軍が出動するぞ」と言い切ったのだ。中国は、北京にいる日本大使と米国大使をただちに外交部に呼びつけ、最大限の抗議している。

 米政府関係筋によると、「尖閣防衛」を明言することは訪日のかなり前から準備されていたようだ。訪日寸前に行われた読売新聞との書面インタビューでもオバマ大統領はこれに言及している。とはいえ、この「尖閣防衛」の明言に関して、その直後から米国の一部でも、「Draw another red line」(一線を超える)との批判が出ている。オバマ大統領が「尖閣防衛」を明言したことは米中間に新たの火種を撒いたと言える。
("Did Obama just draw another red line in the East China Sea?" The Daily Beast, 4/25/2014)

 なぜオバマ大統領はそこまで踏み込んだのか。

 保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・オースリン博士はその理由を次のように分析している。「オバマ大統領は日本到着後直ちに向かった銀座のすし屋で安倍首相と非公式会談しながら、リバランス戦略を蘇生させる最後でベストの望みを自分に与えてくれるのは、ここにいる安倍以外にいないかもしれない、と自分に言い聞かせていたに違いない」
("Shinzo won't go," Michael Austin, Foreign Policy, 4/23/2014)

 つまり「リバランス」戦略の2本の柱である「安全保障面での同盟強化」と「TPP推進」を同時並行的に構築する上でいちばん力を貸してくれそうなのは日本、つまり安倍首相だ――これこそ「現実主義者オバマ」のホンネだったのだ。

 確かに靖国参拝や歴史認識を巡って安倍首相は、オバマ大統領を苛立たせたり、「失望」させたりもした。出自も、これまで歩んできた人生経験や政治哲学も異なるが、オバマ大統領としては「リバランス」戦略を実現するために安倍首相の協力がどうしても必要だった。

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「「縄と糸」のようにはいかなかった「尖閣とTPP」取引」の著者

高濱 賛

高濱 賛(たかはま・たとう)

在米ジャーナリスト

米政治・経済・社会情勢を日本に発信している。1969年、米カリフォルニア大学卒業、読売新聞社に入社。米特派員、総理官邸・外務省担当キャップ、デスクを経て、調査研究本部主任研究員。98年からUCバークレー校上級研究員。同年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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