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ビッグデータは「知能」になれるのか

2014年5月15日(木)

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 先日、日経新聞にこんな記事が出ました:

人工知能が東大合格する日 私立文系なら半数突破?

 これを見て、「あれ? 昔、似たようなニュース・ヘッドラインを見た覚えがある」と思われた方がいるかもしれません。その通り、1980年代の人工知能ブームで、淵一博博士率いるICOT(第五世代コンピュータ開発機構)などが1000億円以上の研究予算を使い、推論マシンとその上で動くソフトウエアを開発し、「小中学校の国語の試験問題で合格点を取れるようになった」云々、新聞紙面を賑わせていました。次第にその学年が上がり、遠くない将来には東大入試問題もいけるだろう、などのコメントもあったと思います。

 筆者がNEC C&C情報研究所の研究員だった80年代末期の日本は、人工知能ブームに沸いていました。テレビCMには「ニューロ・ファジイ洗濯機」などのキャッチコピーが堂々と踊り(ニューロは神経回路網を模した適合型ソフトウエア。ファジイは「0」と「1」だけでない中間値を許容した論理演算)、ハイテク家電の単価が永遠に上昇するかのような期待感を製造業が共有している雰囲気がありました。

 しかし、当時の単純なニューロ・コンピュータは計算量がすぐに爆発し、将来のどんなスーパーコンピューターをもってしてもカバーできないくらい筋の悪いものでした。このことは60年代にMITのマービン・ミンスキー教授が数学的に証明済みであり、70年代に東大の甘利俊一先生が発案されていた改良策も取り入れていなかったので、失敗は必然でした。宴が終わった後には、経済バブルに影響された技術バブルというのは怖いものだ、という教訓が残りました。

 それ以降、人工知能にとっては冬の時代が訪れました。

「人工知能(?)」 がクイズ王を負かした日

 時代は下って、2011年2月16日のこと。

 アメリカの「ジョパディ」という長寿クイズ番組で、米IBMが開発したコンピューター“ワトソン”が、人間のクイズ・チャンピオンであるケン・ジェニングスらを打ち破って、優勝したのです。ワトソンはIBMが2004年頃から構想・企画に3~4年かけ、さらに研究チーム100名が威信をかけて技術開発に3~4年を費やしたものです。(概要はこちら:「質問応答システム“ワトソン”がクイズ番組に挑戦! ~クイズ王との競演で“ワトソン”が魅せたコンピュータの大いなる可能性 ~世界が注目、自然言語による質問応答テクノロジーは新たな水準へ」)

 詳細は、書籍「IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト」をご参照ください。(SFのラインナップで有名な早川書房から、というのが暗示的ですね。冒頭部分をPDFでダウンロードできるようになっています)

 ワトソンはインターネットに接続されていないスタンド・アロンのコンピューターで、本、台本、百科事典(Wikipediaを含む)など2億ページ分のテキストデータ(70GB=ギガバイト程度、約100万冊の書籍に相当)を取り込み、語と語の関係や、文の意味構造のようなものを、あらかじめ大量に整理、蓄積しています。生データを人間の研究者が加工、分類した「知識」に近いものであるとはいえ、ビッグデータと呼んでも良いでしょう。クイズの問題文をテキストデータで与えられると、その文の構造を瞬時に解析し、2880個のCPUコアが総メモリー15TB(テラバイト)を使って、同時並行処理で大量の意味パターンと照合。類似度、確信度を計算してランキングします。

 ワトソンは、前回ご紹介したフレンドリーな対話ロボットと違って人の顔を持たず、また音声入力機能を持ちません。これらは、問題文を「理解」して正しい解答を出すために本質的には必要がなく、また音声認識誤りは無駄に精度を下げるだけだからということです。

 クイズを解くのに必要な知識を大量に持っておけば、いつか人間のチャンピオンを破れるのではないかという夢が、いわば力ずくで達成されました。処理速度やメモリー容量の向上もありましたが、いかにもビッグデータ時代らしく、実在の知識の素材、テキストデータを大量に集めてあらかじめ分析しておいたことが勝利の鍵だった、と言えるでしょう。

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「ビッグデータは「知能」になれるのか」の著者

野村 直之

野村 直之(のむら・なおゆき)

メタデータ株式会社社長

NEC、MIT人工知能研究所、ジャストシステム等を経てメタデータを創業。ビッグデータ分析、ソーシャル活用、機微情報の匿名化ソリューションなどを提供中

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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