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中国人が“人生を賭けて”マンションを買う理由

2014年5月22日(木)

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「来日して、なんだかすっかり生まれ変わったような気分なんです。人生のやり直しをしているみたいなんですね」

 以前、都内の大手企業に勤務する謝さん(29歳)に会ったとき、彼が清々しい表情でこう語っていたことを、北京での取材中に突然思い出した。

 謝さんとはそのとき「日本に住んでいれば、結婚前にマンションを買わなくてもいいし、戸籍とか結婚相手とか、いちいち面倒くさいことを考えなくていいから、とても気が楽なんです。中国に住んでいたら、こんなに気楽な生活はとてもできない」というような話だった。

 日本でも知られるようになったが、確かに中国には「男女が結婚するとき、男性側がマンションを買わなければいけない」という固定観念がある。最近、とくに都市部ではあまりにもマンション価格が高騰しているため必須というわけではなくなってきたが、それでも伝統的に男性がマンションを買って、ようやく結婚の条件が整うという考え方が根強い。また、中国では、不動産市場が確立したのは15年ほど前からで、それ以前は住宅はすべて職場から無料で支給されるものだったため、中国人の「自分の家を持ちたい」という願望は非常に強いといわれてきた。

 だから、中国人はみんな血眼になって不動産を購入するのだ――。私はそんなふうに理解してきた。

 それは間違ってはいない。しかし、私は北京で取材しているうちに、「中国人が必死で不動産を買う、もうひとつの大きな理由」に初めて気がついた。そこには戸籍問題が深く関係している。

 「えっ? 中国人の戸籍? ああ、農村と都会では戸籍が違っていて、差別があるっていう話でしょ?」とすぐに気づく方もおられるだろう。むろん私も中国が抱える大きな問題のひとつとして戸籍制度があるということは承知していた。だが、戸籍の問題と個人がマンションを購入する話が、頭の中で結びついておらず、ピンときていなかったのだ。

人生の選択肢を「マンション」が決める

 日本人にとって、戸籍とはどんなものだろう? 初めてパスポートを取得するとき、結婚するとき、子どもが生まれるとき、そして親が亡くなるとき――。人生で戸籍謄本を必要とする機会はそれほど多くない。それに、もし必要になっても、誰でも役所に行けば必ず手に入れられるものであり、ただ書類上の手続きに必要というだけのことだ。日本人の多くが、自分の戸籍がどうなっているのかなんて、深く考えたことはないのではないだろうか。

 一方、中国人の人生と戸籍は切っても切り離せない。生き方に多大な影響を及ぼしてしまう。

 一見、豊かになり日本人とさほど変わらない、人によっては豊かな生活を謳歌しているように見える中国人は、実はさまざまな足枷をはめられ、日本人とは全く異なる生活条件、社会環境のもとで暮らしている。

 それがとても分かりやすく露わになるのが、マンションの購入なのだ。

 話を北京に戻そう。今回の取材で初めて出会った馬さんは、シルクロードで知られる甘粛省蘭州生まれの31歳。北京の日系企業に勤務している。華奢でかわいらしい雰囲気の馬さんは開口一番、「年内に結婚する予定なんですよ」と、うれしそうに語ってくれた。お相手は武漢出身の男性だ。

 先日購入したばかりだという新居は北京市中心部からバスで1時間弱の距離にある通州という町にあり、もうすぐ地下鉄6号線の駅が開通するという。彼女は春節前の不動産価格が下がる時期を狙って中古市場のウェブサイトから物件を探し出し、97平方メートル、200万元(約3300万円)の中古のマンションを購入した。このあたりではだいたい「中の上」くらいの物件で、北京市中心部だと、少なくともこの2~3倍以上はするという。

 私は何の気なしに「じゃあ、結婚に向けての準備が整ったというわけですね」というと、彼女は意外な言葉を口にした。

「まあ、それもありますけど、マンションを買ったいちばんの理由は、未来の赤ちゃんのためなんですよ」 

 「えっ、赤ちゃん? それは子育てをするのには安定した生活が必要とか、子ども部屋が欲しいとか、そういうこと?」と聞いてみると、「違う」という。

 彼女は初対面の私に、中国人にとって敏感な問題である自分の戸籍について語り始めた。

コメント18件コメント/レビュー

とても参考になりました.外国人労働者の受け入れを推進する日本人は.こういう中国の事情を知った上で,外国人労働者の受け入れに賛成しているのだろうか?(2014/05/23)

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「中国人が“人生を賭けて”マンションを買う理由」の著者

中島 恵

中島 恵(なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年、山梨県生まれ。1990年、日刊工業新聞社に入社。退職後、香港中文大学に留学。1996年より、中国、台湾、香港、東南アジアのビジネス事情、社会事情などを執筆している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

とても参考になりました.外国人労働者の受け入れを推進する日本人は.こういう中国の事情を知った上で,外国人労働者の受け入れに賛成しているのだろうか?(2014/05/23)

下のコメントに「一定期間その地区に架空の住所を持つなどしているのです。ぼろぼろの一間でもいいんです。でも子供はその有名な学校へ入れるのです。」とありますが、米国サンフランシスコのベイエリアでも、中国から来た親達が同じ事をやっていますね。学校のいい地区の物件を買いあさり、借りまくっていますね。お陰でその学区の物件は超高騰し、その公立学校では生徒の90%以上が中国系になっています。(2014/05/23)

それだけ日本の戸籍制度が形骸化している、という事ではないでしょうか。住民登録制度に一本化すれば、無駄な税金を使わず済む気がします。(2014/05/22)

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三品 和広 神戸大学教授