
このコラムは、そもそも新聞社系出版社のサイトのコラムであるので、当然のごとく時事ネタも扱うのだが、なにせ書いているのがいいかげんなマンガ家であるから、基本的にはニュースの本質についての論考よりも、そのニュースから派生的に想起される益体もない事柄がメインとなる。
……はずなのだが、いかんせん人間として、あるいはマンガ家としての修業がまだ足りないので、ついついキーが滑ってうっかりマジメなことも書いてしまい、あとから激しく落ち込むこともある。しかも悔しいことに、たくさん読まれたりリツイートされたりするのはそういう回だったりして、忸怩たる想いとともに「人はやはりまじめなことが好きなのだなあ」と暗然たる気持ちにもなるのだった。
さて、テレビではいわゆる「暗いニュース」が続く中「久々の明るいニュース」として、皇族と出雲大社宮司家との婚約内定の報を流している。
ニュース番組やワイドショーでは上の表現はもはや常套句となっている感があるが、流すニュースを選択しているのも優先順位を付けているのもテレビなので、あまりしつこくそういわれると、流す前のニュースに最初から「暗い」とか「明るい」とかいう形容詞をくっつけるのもどうか、と思ってしまう。
ニュースは本来、起きたことをそのまま正確に伝えればいいのであって、自販機の「つめた~い」「あったか~い」じゃないんだから、そのニュースが「暗い」か「明るい」かを判断するのは、各視聴者にまかせればいい。
と、文句をいっておりますが、一視聴者として典子様のご婚約はたいへんおめでたいことと承っております。
で、ここから先は、そのニュースを見聞きして想起された「益体もないこと」の範疇に入っていく。読者は各自、眉に付ける唾液を抽出する準備をされたい。
実は本業のほうで、もう何年も中断しているマンガがある。
中断自体は連載媒体の休刊という不可抗力な出来事が理由であり、作者の望んだことではないのだが、ときどきその辺を勘違いして「なぜ続きを描かないのか」というお叱りを作者のもとへ送ってくる人がいる。
いや、描きたいのはやまやまですが、マンガは仕事であって趣味ではない。載せる場所がなくお金も出なければ、他の仕事に優先して描くわけにもいかない。逆にいえば、場所とギャラと時間さえ確保されれば再開したいのだが、現実がそうなっていないのは、残念ながらそれがこの作品への客観的な評価とあきらめざるをえない。
ま、それは本題ではない。
そのマンガはおおざっぱにいえば大和朝廷の征服史をベースにした伝奇マンガであり、そうしたマンガを描いている身からすると、このたびのご婚約発表は、現皇室の慶事という「時事」ネタを越えて「おおっ」と色めき立つものがあった。
そうそう、あったあったあの漫画ですね。今でも私の本棚にあります。今回の記事から、あの場面はこの時の取材が元か?と想起しております(笑)。(2014/05/28)