2010年2月、私たちはJAL再生のため、徹底したヒアリングを実施していました。なぜ日本を代表する会社の一つであったJALが破綻してしまったのか、事前に多くの情報はありましたが、その原因を自分たち目で直接確かめたかったのです。
畑違いの京セラグループからやってきた稲盛さんと私と大田嘉仁さんは、飛行機の整備工場や空港にも足を運んで、現場の社員の話を聞くことに努めました。本社では100社近い子会社の社長を一人ひとり面談して状況を聞きつつ、私たちもJALという企業と航空業界について学びました。航空業界については素人ですし、5万人もいる巨大企業の組織のなかでどのような仕事をしているのかを把握することが不可欠だったのです。

経営に対する基本的な考え方が間違っている?
ヒアリングを通じて私が感じたのは、企業経営に対する基本的な考え方が間違っているのではないか、ということでした。
まず、京セラで育った私から見ると、JALでは経営に必要な数字がすぐに出てこない。月次の損益計算書は2カ月遅れで出ていたし、100社ある関連会社では月次貸借対照表も作成されていなかったのです。また、経営幹部の誰が利益責任を負っているのかも全くわからない状態でした
JALのグループ全体は予算制度で運営されていました。売り上げに当たる収入予算は、航空券を販売する販売部と貨物の輸送を手がける貨物郵便本部が決めており、経費の予算はすべての部門で作っていました。経営企画本部という部署が全体をとりまとめており、ここにすべての権力が集中しているようでしたが、利益責任を持っていたかというと、そうではありませんでした。売り上げが目標通りに到達しなくても、誰からも責任を問われることもなく、一方で経費は垂れ流しで、内訳をチェックする部署も存在しなかった。これは、部門別の独立採算で経営を見続けてきた私にとって驚きの事実でした。
いただいたコメント
コメントを書く