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組織のトップダウン改革を成功させるための3条件

太平洋戦争中の「陸軍の潜水艦」と「黒田日銀」に共通項?

2014年6月3日(火)

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 このコラム「エコノミック・ソナー」は、潜水艦に搭載されている音波探知機(ソナー)のように内外経済の実相をいろいろな角度から探ってみようという、ミリタリー色を帯びたネーミングだ。今回はその原点にも沿う、軍事と経済を絡めた話である。

 太平洋戦争中に日本の陸軍が輸送用の潜水艦を建造して実際に部隊を運用したという、知る人ぞ知る驚くべき事実がある。

 1942年10月の南太平洋海戦を最後に日本海軍は勝利から遠ざかり、海軍航空部隊は弱体化。陸軍部隊を乗せて南方に輸送するための海軍による船団の護衛も失敗続きで、陸軍の将兵は次々と戦う前に溺死し、貴重な資材が海底の藻屑となっていった。陸軍は「海軍頼りにならず」という心境になっていったという。

 それが陸軍による輸送用潜水艦の建造計画「マルユ」(○の中に「ゆ」と書く。「ゆ」は輸送を意味)に結びついた。これをまったく知らされていなかった海軍は半年後にこの計画に気付いて陸軍に中止を求めたが、陸軍はこれを拒否した。

 輸送用潜水艦の建造数は、第1ロットとして20隻。運用状況を見た上で最終的に400隻の建造が計画された(ちなみに日本海軍が開戦時に保有した潜水艦は120隻程度)。

 44年5月、3隻の陸軍潜水艦がフィリピン方面への輸送に出発した。だが、直後から故障に悩まされ、マニラで再整備した上で半年後に再び出港したものの、1号艇は急速潜航に失敗して沈没。2号艇はレイテ島・オルモックへの輸送途中に行方不明。3号艇は米軍機の攻撃で沈没した。戦局にはまったく寄与できず、陸軍の思い上がりによる資材・労力・人命の無駄使いを示す明確な実例になった。

(以上の記述は、三野正博氏の著書『日本軍の小失敗の研究』に基づく)。

門外漢が口を出し資源の無駄使いをする愚

 海にまつわるさまざまな事象や武器・部隊の運用、前線の状況などにうとい、あからさまに言えば素人同然の陸軍が、海軍の分野に足を踏み入れてもうまくはずがないというのは、子供でも分かりそうなことだ。また、国内に資源が乏しく、対米開戦直前でさえ継戦能力に限界ありと良識ある人々から指摘されていたにもかかわらず、潜水艦への「二重投資」という資源の無駄使いが、戦争中に行われていたわけである。

 陸軍がそうした行動に出た背景には、海軍が制海権・制空権を完全に失っており、43年3月に米軍機の攻撃で輸送船団8隻が全滅した「ダンピール海峡の悲劇」など、陸軍部隊を乗せた輸送船団の護衛任務に失敗し続けることへの、きわめて強い不信感があった。さらに、日本の組織の伝統的な特質としてよく言われる「縦割り意識」の弊害が露呈した、きわめてわかりやすい事例だという見方もできるだろう。

 数十年の月日が経過しても、日本人のメンタリティーが根本的に変わってしまうことはないだろう。難局において確たる実績を挙げることができない組織に対する強い不信感と、それを足場とする大胆な政策行動というパターンの事例は、最近も見出される。

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「組織のトップダウン改革を成功させるための3条件」の著者

上野 泰也

上野 泰也(うえの・やすなり)

みずほ証券チーフMエコノミスト

会計検査院、富士銀行(現みずほ銀行)、富士証券を経て、2000年10月からみずほ証券チーフマーケットエコノミスト。迅速で的確な経済・マーケットの分析・予測で、市場のプロから高い評価を得ている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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