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「公的市場」と化す各国株式市場

失われる民間金融市場の力

2014年7月1日(火)

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 今年も既に折り返し地点を過ぎ、市場も後半戦に入った。年初来、アルゼンチン・ペソの急落に始まってウクライナ危機はロシアのクリミア編入という事件に発展、数週間前には突如としてイラクの北部や西部がISIS(イラクとシリアのイスラム国)という聞きなれない組織によって制圧され、首都バクダッドにまで迫る事態にまで拡大している。

 従来であれば、イラク情勢の悪化と聞けば「原油価格上昇」を思い浮かべ、株価にも多少影響しそうなものだが、今日の市場は平和そのものである。確かに、イラクの原油輸出に影響が出た訳ではなく、同国南部に集中している主要な生産・精製拠点は容易に武装勢力の手が届く地域でもない。

 シーア派偏重主義でスンニ派の過激勢力の増長を加速したマリキ首相への批判も強まっており、内外圧力に拠る「マリキ落とし」によって、安定政権を築こうとする動きも出ている。同首相による空爆要請を拒絶した米国が、そこに一枚加わっているのは、先日のケリー米国務長官による「新内閣組成要求」を見ても明らかだ。但しマリキ首相はこれを無視する姿勢を見せており、事態の急速な好転は期待し難い。

 イラクは今や、世界経済を支える重要な原油生産国である。日量3.25百万の生産量は世界第7位の規模を誇り、OPEC内でもクウェートやアラブ首長国連邦(UAE)を抜いてサウジアラビアに次ぐ二番手となっている。万が一にもイラクの石油輸出インフラに支障が生じるようなことが起きれば、ブレント価格は軽く1バレルあたり40-50ドル上昇する、といった業界分析も見かける。

 IEA(国際エネルギー機関)に拠れば、原油価格安定の為にOPECは下半期に日量90万バレルの増産が必要と試算しているが、夏季の需要増に加えてリビアやナイジェリアそしてイランの輸出減といったマイナス材料にイラク問題が加わることは、歓迎されざる事態であろう。

 また、中長期的な供給見通しも重要だ。1500億バレルの確認埋蔵量を持つと言われるイラクは、安価な開発コストで良質な石油が生産できる数少ない国であり、IEAは今後必要とされる原油供給増の3分の2はイラクに依存すると試算している。世界経済は、イラクを無視する訳には行かない。

崩れかける原油価格の安定構造

 内外メディアはISISを国際テロ組織と呼んでいるが、実態的にはもはや一つの政治勢力になった、との報道も増えてきた。シーア派偏重のマリキ政権に対する不平や不満を吸収し、単なる過激派から本気で建国を目指す政治的パワーに昇華しつつあるのだろう。今後の展開次第では、内戦がシーア派、スンニ派、そしてクルドの三勢力それぞれが自治権を主張するようなカオスな状態を生む可能性もあろう。

 現在、同国における原油生産量は日量3.25百万バレルと2005年当時の1.75百万バレルから大きく増加している。IEAは、ISISによる武力闘争開始前には、その生産増が支えとなって2019年までにOPEC諸国の生産量が日量2.08百万バレル増える、と楽観していたが、予想外の事態急転を受け、生産設備停止などのリスクを踏まえてその見通しを急遽下方修正した。

 OPEC加盟12カ国のうち、ナイジェリアやイランなど8カ国は減産傾向にある。そんな中で過去数年間の原油価格安定に貢献していたのが、イラクによる増産であった。その構造が崩れかけている。エクソンモービルやBPなど外資系大手は職員の撤退を始めており、サウジの増産力にも限界がありそうだ。

 市場の一部には、スンニ派とシーア派の対立が、サウジとイランの反目という中東最大の爆薬に火を付けるリスクを懸念する声すら上がっている。軍事介入に消極的なオバマ大統領も、流石にそうした事態を放置するとは思えないが、シェール革命による原油価格安定を当然視してきた金融市場に一定のストレスが掛かることも有り得るのではないか。

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「「公的市場」と化す各国株式市場」の著者

倉都 康行

倉都 康行(くらつ・やすゆき)

RPテック代表

1979年東京大学経済学部卒業後、東京銀行入行。東京、香港、ロンドンに勤務。バンカース・トラスト、チェース・マンハッタン銀行のマネージングディレクターを経て2001年RPテック株式会社を設立、代表取締役。立教大学経済学部兼任講師。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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