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サムスンの人事と成果のあいまいな連動性

企業の開発力をより高めるには

2014年7月3日(木)

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 5月22日付けの当コラム「日本の技術力は本当に高いのか」に寄せられたコメントには興味深いものがあった。一つは、技術音痴の決裁者が多くの会社にいることへの危機感に関するもの。もう一つは、サムスンの技術力は向上してきたが開発力は果たしてどうなのかという疑問。

 今回は、これらのコメントを取り上げて、まず開発力というものに関して、もう一度考えてみたい。そのうえで、開発力とは必ずしも連動していなかったと思えるサムスンの昇進の例を取り上げ、技術音痴が存在してしまう現実と、その弊害について筆者の意見を述べたい。

サムスンの開発力を裏付ける事実

 まず、ここで言う開発力とは新規製品開発力と定義して議論する。これまでのコラムでも何回か採り上げてきたが、ホンダの開発力を代表するものと言えば、小型ジェット機や2足歩行型ロボット「アシモ」、ハイブリッド車、燃料電池自動車など、例を挙げればきりがない。これらは最初から自前で展開していたもので、原点にあるのは、長い期間に渡って培ってきた幅広い開発力だ。ただし、実用化に至るまでには20年を超えるものが多い。

 その一方で、一から開発をするにあたっては、いろいろな領域での失敗も少なくない。ホンダ用語にはKKD(勘、経験、度胸)という言葉があり、開発段階ではこのKKDが重んじられる側面もある。しかし、KKDは論理性や洞察力とは相いれないもの。KKDは技術判断をする上で必要な要素にもなり得るが、十分条件とはならない。これは、論理展開や洞察力の不足を、もっともらしい用語で補おうとする発想である。開発力を一から育てるホンダにとって、このKKDは良い面も悪い面もあったと言える。

 ではサムスンはどうなのか。サムスンの開発力に関しては、そのレベルの高さという点に関して、日本においては否定的な意見が多いのも事実だ。基礎技術を真似たり、人材をスカウトしたりすることで、開発力を高めてきたという事実がそうさせている節がある。

 コラムのコメント欄にも、「サムスンがNANDフラッシュメモリーに関する技術を日本の会社から盗んだという技術者の証言があった」などといった表現を見た。もし本当にそうであるのなら公の場で証言し、証拠を提示し裁判に持ち込むことまでやる必要があるだろう。

 犯罪である疑いがあるのなら徹底して戦うべきであり、客観的事実がどうかを周囲も知る必要がある。言葉だけでの発信だと説得力はない。サムスンが業界トップになったことへの悔しさ紛れの捨て台詞のようにも聞こえる。

 サムスンは、線幅10nm台のメモリーも実用化しているわけだが、開発力がなければ具現化できないだろう。このような先端開発には真似をするお手本がいない。自力で開発するしか手段はないので、開発力がなければ実現できない。時間軸と共に技術は進化する。進化の過程で技術蓄積や人材が実用化を可能とする。

 ホンダは人材を育てるが、サムスンは人材を競わせる。同様に、ゼロから研究開発に着手するホンダに対して、サムスンは基本的にM&Aで時間を買う――。このように、ホンダとサムスンでは企業文化や経営スタイルが大きく異なります。

 本書は、ホンダとサムスンで技術開発をリードした著者が見た日本と韓国の比較産業論です。サムスンという企業グループの実態に加えて、日本人ビジネスパーソンと韓国人ビジネスパーソンの特徴、日本の電機大手が韓国企業に負けた理由、日本企業がグローバル市場で勝ち抜くために必要なことなどを自身の体験を元に考察しています。ホンダとサムスンという企業を通して見える日韓の違いをぜひお読みください。

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「サムスンの人事と成果のあいまいな連動性」の著者

佐藤 登

佐藤 登(さとう・のぼる)

名古屋大学客員教授

1978年、本田技研工業に入社、車体の腐食防食技術の開発に従事。90年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動、電気自動車用の電池開発部門を築く。2004年、サムスンSDI常務に就任。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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手嶋 龍一 作家・ジャーナリスト