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「足がない」ことが可能性を広げる

為末大と目指す、東京パラリンピックの金メダル

2014年7月17日(木)

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 「義足」と聞いて、皆さんはどういうイメージを思い浮かべるでしょうか。事故や病気、戦争等で切断した足を補う為に装着するもの。これが多くの人の考える義足のイメージかもしれません。

 僕は義足の、この「補う」というイメージを変えたいと思っています。

 僕が現在関わっている義足の研究エリアは「ロボット義足」「途上国向け義足」「競技用義足」の3つ。どれも「補う」ものから、人間を「進化」させることへの一助となるよう開発を進めています。

 すでに人間を「進化」させるに至った義足というのは世の中に生まれ始めています。例えば、オスカー・ピストリウスという南アフリカ共和国の両足義足の陸上選手。彼が義足の世界に与えた影響はとてつもなく大きいものでした。

2012年のロンドンオリンピック400メートル準決勝。健常者と並んで走るオスカー・ピストリウス。(写真:ロイター/アフロ)

 彼の登場は、義足の研究者である僕に、競技用義足という分野に挑戦する意欲をかき立てさせました。

 ピストリウスは先天性の障害によって生後11カ月で両足の膝から下を切断しました。それでも学生時代から義足を付けてラグビー、テニス、レスリングなど様々なスポーツに取り組み、陸上競技にも挑戦。結果、2004年のアテネパラリンピックでは男子100メートルで銅メダルを獲得しました。

 アテネから4年後の2008年、北京五輪を迎えた際、ピストリウスは、今度はパラリンピックではなく、オリンピックの400メートルへの出場を目指します。義足の選手が他の健常な選手と同じオリンピック競技に出場することは、もちろん過去に例のないことです。

 ピストリウスのこの動きは、大きな論争を巻き起こしました。ドイツのPeter Bruggemannは、競技用義足と健常者アスリートの足首動きを比較する論文を発表し、この論文のデータを元にIAAFが競技用義足を付けた選手が自分の足で走る選手と競争するのは「不公平だ」と指摘しました。競技用義足は、カーボン製の板バネ。文字通り、バネとなって選手の足に動力を与えます。ともすれば人間本来の動力以上の「バネ」を得られることになりかねない義足の使用に「待った」をかけたのです。

 スポーツ仲裁裁判所(CAS)での争いにまで発展したこの闘いは、最終的にCASが国際陸上競技連盟(IAAF)の判断を覆し、ピストリウスが健常者の大会への出場を認める裁定を下すという結果に終わりました。いまだに研究者の間では意見が分かれており、論争は続いています。

 この時は五輪参加標準記録を突破することができず、ピストリウスの北京オリンピック出場はかないませんでしたが、その後、彼は世界陸上競技選手権大会など健常者の競技会に立て続けに出場。ついに2012年のロンドンオリンピックへの切符を勝ち取り、準決勝にまで進んだのです。

 ちなみに、ロンドンに出場した400メートルの日本人選手で、準決勝に進むことができた選手は一人もいません。

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「「足がない」ことが可能性を広げる」の著者

遠藤 謙

遠藤 謙(えんどう・けん)

ソニーCSL研究員

MITメディアラボにて博士取得。現在、ソニーコンピュータサイエンス研究所研究員。ロボット技術を用いた身体能力の拡張に関する研究や途上国向けの義肢開発に携わる。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師