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企業と流動する人材との関係

技術者には競争意識が必須の時代に

2014年7月24日(木)

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 グローバル人材の採用や育成などに向けて、採用側の企業が学生などに手厚い制度を導入する事例が目立ってきた。トヨタ自動車は理系女子への奨学金制度を、2015年4月をメドに導入すると発表した。ほかにもいろいろな制度を提供する企業があり、このように人材確保に心血を注ぐ企業には良い人材が集まるだろう。

 一方、ここ数年問題視されているのは、若者の理系離れである。これからの日本のイノベーション力を高める上で科学技術が中枢を担うのは間違いがない。日本政府も科学技術政策は最大の関心事項の1つとして取り組んでいる。そのためにも理系人材は今後ますます必要とされるにも関わらず、実態は伴っていない。

 ではなぜ、理系離れが進んだのだろうか。それには複合的な要因があげられるだろう。文系に比べて理系の授業料は負担が大きい(私立)、実験などでの授業の拘束時間が長い、企業のトップや役員になれるのは圧倒的に文系人材の方が多い、生涯年収は理系よりも文系が高い(一部に逆説もあるが)――などといった事実は多々ある。しかし、最大の原因は、理系の真の魅力が正しく若者に伝えられていないことではないだろうか。

 大学や研究機関の研究者の成果は、大きな社会変革を起こす可能性がある。企業技術者は、快適な社会を創る上で、大きく社会に貢献するものである。具体的な事例を上げれば枚挙に暇がないが、こういった技術者のやりがいを伝える力が不足しているように思え、非常に残念な気持ちになる。

サムスン流競争意識

 筆者が所属してきたホンダもサムスンも、高い技術力を元にしてイノベーションを起こし、そして社会に変革をもたらしてきた。理系人材が活躍できる土壌があった企業だと感じている。

 この両社だが、人材を育成するという観点では、大きな違いがあった。まずサムスングループ。人材をマニュアル的に育成する企業はほとんどないだろうが、階層ごとにある程度のプログラムを用意し研修教育していく企業はあり、サムスンはその典型だった。

 ただし、単に個々人を育成するという狙いではなく、むしろ同僚レベル間での競争意識を持たせることで切磋琢磨、自己開発、個々人の胆力を鍛えようとしている。よって、そのような競争意識に立ち向かっていけない新入社員も多く、実際に入社後3年以内で約30%が会社を去る。

 ホンダは人材を育てるが、サムスンは人材を競わせる。同様に、ゼロから研究開発に着手するホンダに対して、サムスンは基本的にM&Aで時間を買う――。このように、ホンダとサムスンでは企業文化や経営スタイルが大きく異なります。

 本書は、ホンダとサムスンで技術開発をリードした著者が見た日本と韓国の比較産業論です。サムスンという企業グループの実態に加えて、日本人ビジネスパーソンと韓国人ビジネスパーソンの特徴、日本の電機大手が韓国企業に負けた理由、日本企業がグローバル市場で勝ち抜くために必要なことなどを自身の体験を元に考察しています。ホンダとサムスンという企業を通して見える日韓の違いをぜひお読みください。

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「企業と流動する人材との関係」の著者

佐藤 登

佐藤 登(さとう・のぼる)

名古屋大学客員教授

1978年、本田技研工業に入社、車体の腐食防食技術の開発に従事。90年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動、電気自動車用の電池開発部門を築く。2004年、サムスンSDI常務に就任。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師