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米国市場に浮上する流動性リスク

株価バブルより重要な債券市場の問題

2014年8月1日(金)

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 いま世界中の金融業者を苛立たせているのが、市場価格の変動率(いわゆるボラティリティ)の低下である。欧米大手金融機関の4-6月決算は、債券や株式の発行が活況だったともあって引受手数料が大幅に伸びた為に利益は積み上がっているが、市場売買の部門は押しなべて低調だ。それが復調する兆しは、まだ見えて来ない。

 BIS(国際決済銀行)などの指摘を待つまでもなく、こうした市場の「世界的な異常気象」は、FRBなど主要国中央銀行の緩和政策がもたらした副産物である。市場価格が変動しなければ、投資家も動きようがない。

 強烈な緩和政策によって市場から価格変動という「自由な権利」が奪い去られたのと同時に、市場もまた中央銀行に対して極めて従順になった、と言えるかもしれない。「FRBと喧嘩するな」という利益確保の為の市場格言は、いつの間にか「FRBの声は神の声」という祝詞に変化してしまったかのようだ。

 流石に欧米市場では、大手機関投資家やヘッジファンドなどから「中央銀行の緩和政策は過剰だ」「FRBは早期に利上げを行うべきだ」といった声も上がり始めている。「民主的な投票」の下で価格を設定する本来の役割を市場は早く取り戻すべきだ、というのがその言い分である。

恐怖指数の低下は「潜在的恐怖感の高まり」を示唆

 市場から自律的な価格設定力が失われたという典型例は、日本国債であろう。日銀は徐々に長期金利が上昇していく姿を理想形として抱いているかもしれないが、自由度を剥ぎ取られた市場にそうした円滑な価格機能を期待するのは、もはや無理であろう。

 因みに米国には、恐怖指数と呼ばれる数値(VIX指数)がある。文字通り解釈すれば、その低下は「恐怖感の消失」ということになるが、そもそも同指数は株式市場のオプション・プレミアムから得られるものであり、現実の恐怖感とは関係が無い。昨今のボラティリティの低下に伴うその指数低下は、むしろ市場に何らかのマグマが溜まりつつあるという、逆説的な「潜在的恐怖感の高まり」を示唆しているようにも見える。

 ボラティリティの低下を「経済安定性の反映」と見る向きもあるが、実務的にいえば、低金利下での市場の静けさは「借金による運用=レバレッジ拡大」を育む土壌となる。金利上昇気配が強まれば、一気にその巻き返しが来ることを懸念せねばならない。従って、投資家だけでなく企業経営者らも「嵐の前の静けさ」として常に心の準備をしておいた方が良いだろう。

 つまり、ボラティリティの低下そのものが問題なのではなく、それが将来的に何を引き起こすのか、という波及経路を想定することが重要なのである。その意味で、米国市場でいまホットな話題になっている債券市場の流動性への問題意識は、日本市場にも当てはまるものとして、留意しておくべきだろう。

 これは、巷に喧伝されている株価バブルの可能性よりも、もっと重要なテーマを孕んでいるように思われる。では、世界経済に大きな影響力を持つFRBは、この点をどう考えているのだろうか。

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「米国市場に浮上する流動性リスク」の著者

倉都 康行

倉都 康行(くらつ・やすゆき)

RPテック代表

1979年東京大学経済学部卒業後、東京銀行入行。東京、香港、ロンドンに勤務。バンカース・トラスト、チェース・マンハッタン銀行のマネージングディレクターを経て2001年RPテック株式会社を設立、代表取締役。立教大学経済学部兼任講師。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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