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何でいつも反論するワケ?

仕事とディベートは全く別物

2014年9月3日(水)

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 ここはマーケティング会社の会議室。お得意さんであるクライアントから受注したアンケートの設計についての打ち合わせをしています。出席者は5人。そこには、この春から配属された新人A君も参加しています。

 今回のアンケート。ある程度、層を絞ったアンケートなのですが、お礼の品として豪華なものを用意しているわけではないので、あまり高い回収率は望めそうにありません。マネジャーが「ひとまず回収率10%として設計しようか」と言うので、まーそれも妥当かなと、誰もが思ったはずだったのですが、

 「回収率10%では信憑性に欠けます! 少なくとも70%以上を目指しましょう」

 と新人A君が突如として大声で主張するのです。

 もちろん統計的に言えば、回収率が低ければ誤差が大きくなることは皆が分かっています。しかし、アンケートの目的や予算によって求められる精度は変化するものであり、クライアントもその点は十分に理解しています。

 それをマネジャーが説明しますが、「大学ではそう教えられたし、回収率が低い状態では正しい調査にはならない」と、納得のいかない様子。部長もたまらずフォローをし、「正しい調査の“正しさ”とは何?」とA君に問い、アンケートの回答率が仮に100%だとしても、すべての回答者が正しく答えているとは限らないのだから、その意味で「正しい調査」という言葉を使うべきではないと説明しました。

 さらに部長が「現在の予算で回収率70%をクリアする方法はある?」と聞くと、「それは経験がないから分かりません」との答。「じゃあ、ここはひとまず回収率10%想定で進めるよ」との部長の言葉で会議は進みました。打ち合わせ自体は特に問題なく終わりましたが、A君はまだちょっと不満な様子。

 実は、A君が異論を唱えてくるのは、この時だけではありません。大袈裟に言うと、ことあるごとに異論を唱えてきます。A君に、なんでそんなにいつも異論を唱えるのかを聞くと、「いつも異論があるわけでなく、異論を想定した意見を言ってます。大学ではそう教えられて来たので」との返答。

 ふーん、なるほど、所謂ディベートか。いつもいつもやるような事じゃないんだけどなー…。大学ではおそらく、考え方のトレーニングとしてディベートを取り入れているのであって、仕事場でいつもやることとしては教えていないはずなのですが、A君はそれが絶対だと、それが仕事だと受け止めているようです。

 とにかくいちいち口ごたえされると、イラッとしますよね。「俺は上司なんだから、言うことを聞け!」と言いたくなります。でも、ちょっと待ってください。

勉強と仕事の違いとは?

 A君は、統計の視点からいえば、間違ったことは言っていません。A君の主張は、様々な条件が整った中では正しい統計の理論なのですが、現実の社会では、すべての条件が整うことの方が少ないものです。理論通りに行かないのが社会であり、仕事ではそれらの現実を鑑みて、与えられた条件下での最良の方法を選択しています。しかし、その経験がないA君にとってはそれがどうしても納得いかないのです。大学を出たばかりで仕事の経験がないA君には、まだその区別がついていないだけなのです。

 冒頭のマーケティング調査の場合、たとえどのような調査を行ったとしても、すべての結果が正しいということはありえません。しかしA君は、どうしても「正しさ」を追求しがちになってしまいます。

 長く仕事をしていると忘れがちですが、新入社員のころを思い起こしてみると、私にもこんなところがあったなぁ…と、思います。多くの皆さんにもそんなところがあったのではないでしょうか。

 今の大学生は、私たちの学生時代とは違い(!?)とても真面目に授業に出席して、よく勉強していると聞きます。当然ながらそれはとても良いことなのですが、どうも、「勉強=先生や本から学ぶ」という図式が強く成り立っており、先生や本から学んだことを、絶対的な真実として捉えているように見えてなりません。視点を逆転させれば、社会、または会社は間違っているということにもなりかねないのです。

 本来は、学校の勉強で得た“知識”を価値あるものにするには、仕事で得た“経験”と結びつけてこそなのですが、入社間もない時期には多くの人が、勉強で得た“知識”さえあれば「自分はできる!」と考え、地道な“経験”を軽視する傾向があります。「根拠のない万能感」とでも言うか…新卒のころの私もそうでした。同時に、自分の有能さを見せたいという意識も手伝って、一生懸命異論を唱えるというA君の行動につながっているのかもしれません。

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「何でいつも反論するワケ?」の著者

越野 孝史

越野 孝史(こしの・たかふみ)

“こと”づくりアドバイザー

1958年福井県生まれ。83年立教大学経済学部卒業、同年大日本印刷入社。85年ドゥ・ハウス入社、同社取締役などを経て現在大阪を本拠とするマーケティング会社に所属。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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