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「留守児童」6000万人、親と離れ田舎で暮らす

2014年9月24日(水)

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 女性活用が言われる日本の隣で、男性と対等に女性が働いている国、中国。その背景には「子育て」への“常識”の大きな違いがある。前編では、都会で働く娘の元へ、学校へ通うまでずっと泊まり込んで孫の面倒を見る祖父母たちを見てきたが、もちろん、これは恵まれたほうの事例。もうひとつエピソードを紹介しておきたい。3世代のローテーションがうまく回っていない、農民工(地方からの出稼ぎ)のケースだ。

 田舎から都会に出てきた農民工、段芳芳さん(32歳、仮名)。田舎で出産したあと、子どもを田舎に残したまま都会に出て夫婦で働いている。戸籍制度の問題があり、戸籍のない都会にいる間は社会保障や福祉、正当な教育を受けられないため、我が子を田舎に預けざるを得ないのだ。そうした子どもたちは「留守児童」と呼ばれ、政府の統計によると約6000万人もいる。「留守児童」は1年に1回、旧正月のときに数日間だけか、あるいは1年に1回も両親に会うことができないという。祖父母の家で生活し、母親の顔すら覚えずに成長する子もいる。

 実は、母子が離れて暮らす例は田舎と都会に限らない。両親、祖父母とも都会暮らしでも、時間が取れないため平日はずっと子どもを祖父母に預け、自分たちは週末だけ世話をする、という話も聞く。

 北京に住む20代後半の私の友人は南京の都会育ちだが、幼少期から中学卒業まで、ずっと祖母に育てられた。そのため、祖母が亡くなったときには号泣したが、今も母親との関係はぎくしゃくしていて、あまり愛情を感じないと話す。

 私は中国に住むある女性の友人に「そんなに長い間子どもに会わなくて、中国人の親は罪悪感を覚えないのだろうか?」と聞いてみた。これは実は担当編集者から聞かれた問いだったが、私自身も何の疑問も持たず、そのまま問いかけてしまった。すると、友人からはこんな答えが返ってきた。

 「それは先進国の人間の質問ですね…」

社会保障の不備と、女性の社会進出の関係

 友人は言う。

 「どんなに中国と日本の状況が異なるといっても、自分の子と会えないことを平気だと思う親はこの世にいないし、罪悪感を感じない親もいないわ。それだけ長く離れなければならないのは、そうしなければ食べていけない事情があるからなのよ。

 罪悪感を感じつつも、人生のうちの数年間だけ離れていても、その間に稼いだお金で子どもに教育をつけさせることができ、貧しさから脱却できると考えれば、それはわずかでも成功へのルートに近づくのではないか、と中国人は考えるんですよ。貧しさからの脱却はどんな問題よりも優先される。だから、長年子どもに会えなくて平気…と思わなきゃ悲しくてやってられないでしょう。子どもの性格が歪もうとも、親子関係が破たんしようとも、我慢する。だって、そうするしかないから」

 私は愕然とした。日頃、中国人も日本人も喜怒哀楽は同じだ、人間は同じように喜び、悲しむのだ、などと偉そうなことを書いてきた私だったが、友人の言葉に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

 中国の子育てには、日本人の想像を絶する世界が、まだまだあるのだ。ちなみに、この友人は50代後半で、子宮に病気を持っていたため、子どもを持ちたくても持てなかった。かつて農村に下放された経験があり、農村の貧しさも知っている。

 つい話が横道にそれてしまったが、ここまで述べてきたように、中国人流子育ては、無条件に「お母さんは子どもと一緒にいてあげるべき」と言いがちな我々からは、びっくりする話が続々出てくる。日本でも戦後の混乱期に母親がひとりで子育てをしなければいけない家庭では、遠く離れた田舎の両親に子どもを預けて、母親が都会で出稼ぎをする、という例があったが、これほど発展した中国でも、まだ母親の愛情を知らずに育つ子どもは多い。社会の基本的な豊かさがまだまだ違うのだ。

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「「留守児童」6000万人、親と離れ田舎で暮らす」の著者

中島 恵

中島 恵(なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年、山梨県生まれ。1990年、日刊工業新聞社に入社。退職後、香港中文大学に留学。1996年より、中国、台湾、香港、東南アジアのビジネス事情、社会事情などを執筆している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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