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“ポスト主権国家”時代の地方政治の役割は?

スコットランド住民投票が問いかけるもの【後編】

  • 小舘尚文

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2014年10月23日(木)

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 より公正で平等な社会を、と希求するのは、イギリスの中でもスコットランドの専売特許ではなく、また、保守党議員を選出していない、いわゆる「民主主義の赤字」を訴える地域も北部イングランドには結構ある*15。しかし、だからといって、独立や権限委譲を要求する「受け皿」にはなってきていない。グローバルとローカルの間で、「歴史的国家」としての独自の制度が広く認知され、政治空間として確立されていたことは今回の出来事の根源にある。

小舘尚文(こだて・なおのり)アイルランド国立大学ダブリン校(UCD)応用社会科学学科専任講師。東京大学政策ビジョン研究センターシニア・リサーチャー、北海道大学公共政策学研究センター研究員併任。専門は比較社会政策、医療安全、社会・福祉サービスにおけるリスクと規制。

 19世紀末に溯れば、イングランドに対して、アイルランドもスコットランドも同様の「ケルト辺境地域」 (Celtic fringe)で、「自治(Home Rule)」運動がみられた*16。その2つの国の命運を分ける決定的局面は、第一次世界大戦後、今からおよそ1世紀前にある。

 アイルランドでは、1916年のイースター蜂起、1919年に始まる英愛戦争、その後の自由国の分離独立と北アイルランドの成立という歴史の流れがあって、今日に至っていることは、ご存知の方も多いだろう。

 一方、イギリス労働党の基礎を築いたフェビアン協会などの諸組織は、19世紀末に結成されたが、スコットランドでも強い支持を集め、当初は、自治や独立要求をしていたナショナリズム運動とも親和性をもっていた。しかし、全国展開を目指す労働運動の中で、2つの勢力の間には、溝が広がっていった。スコットランドで労働党が優位体制を築いた1920年代に、SNPの前身となる組織が結成されたのも頷ける。

 その後、綿工業、石炭・鉄鋼、造船業など重工業を中心に発展し、労働運動の拠点となったグラスゴーは、大英帝国第二の都市となり、全国規模で二大政党となる労働党の強固な支持基盤の1つとなる。また、アイルランド系移民が多く移住したグラスゴーには、北アイルランドと同じような宗教対立も生まれ、社会的不安を募らせることとなった。そのため、多くの有権者が、連合王国の統一性の維持するユニオニズム(集権主義)に傾倒させることともなったのである。

自治独立か、ユニオンか

 結果として、アイルランドのような自治、独立ではなく、ユニオンという選択をしたスコットランドは、第二次世界大戦後に築かれた福祉国家の発展にも寄与し、その枠組みに深く埋め込まれていくこととなる。

 しかし、1970年代に入り、イギリスにおける、福祉国家の最盛期の終焉とネオリベラリズムの台頭、時を同じくして発見された北海油田からの収益をもとに、自治・独立を求める分権運動が再び興隆した。一方で、第二次世界大戦後のイギリスは、海外領土を失い、中流国家化する過程で、求心力を失っていき、1973年には、欧州連盟(現欧州連合)に加盟した。その後、戦後外交の重要な原則となる「3つの輪」(英連邦・アメリカ・ヨーロッパ)の中でも、特にヨーロッパとの関係を深めていくことになる*17

 住民投票1カ月前に独立賛成であることを表明したスコットランド史の大家サー・トム・ディヴァイン教授は、新聞のインタビューでこう述べている*18。「イングランドとスコットランドの連合は、愛情に基づく結婚ではなかった。政略結婚であり、実利的なものだった。1750年代から1980年代まで、その関係は安定していたものの、いまや、それを支える主要な基盤はなくなってしまったか、大いに揺らいでいる。」ディヴァイン教授の独立賛成表明は、賛成派にとって、学界の権威が太鼓判を押すという象徴的出来事でもあった。

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