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生きづらい中国で、美しく生きる人々

システムと個人の相互不信【後】

2014年11月4日(火)

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(前編から読む

 前編では、中国で出会った「システムの不備」に纏わる話をあけすけに編集担当Y氏にしていたら、彼から「中島さん、なんだか最近、中国に取材に行くたびに、どんどん中国が嫌いになっていっていません? 私、今日はあまりの毒舌ぶりに正直いって呆れましたよ!」と言われて、どきっとしたことをお話した。

 中国では、公共の施設はすべてが管理する側の視点で設計されており、使う人がどんなに不便だろうが、そんなことは知ったこっちゃない、というほど使いにくい。障害者用のサービス(点字ブロックなど)もあることはあるが、ブロックは途中で寸断されていたりする。公共の乗り物を利用しなければならない人々は、いつもそのインフラに我慢しなければならない。

 でも、私はずっと不思議に思っていたことが2つあった。1つ目は「中国人はこのシステムにあまり頭にきている様子がないのだけど、どうしてだろう?」ということ。2つ目は「中国人のお役人はあんなに頭がいいのに、どうしてこんな使い勝手の悪い設計をするのだろう?」ということだ。

 地下鉄の自販機にコインやお札が入らずモタモタして焦っていても、私はこれまで後ろの人からせっつかれたことは一度もない。以前、中国人の若者たちと地下鉄に乗ったとき、コインが詰まってしまって自販機が動かなくなったことがあった。みんなして昔のテレビみたいに機械をドンドンと叩いてみたけれどダメ。駅員を呼ぶことになったのだが、私だったらこの際、いつも思っている自販機に対する不満のひとつも言ってみたくなるのだが、若者たちは一言もいわず、素直にコインを返してもらっていた。

 ということは、「もしかして、みんなこの使い勝手の悪いインフラに満足しているってこと? そして、そもそも、どうしてお役人はこんな設計をするの?」と思った。

「修正は不可能、自分だけでも生き残ろう」

 今回の中国での取材では、私はそんな疑問も友人に問いかけてみた。すると友人はこう言った。

「そうじゃないですよ。ある程度知識を持った人たちは、この巨大な国で今のシステムを直すことはほとんど不可能に近いとわかっているから、あきらめているのです。それ以外の人たちは、大概こんなもんだろうと思って、何も考えていないかも。ほとんどの中国人は海外に出たこともないし、海外と比較してみたこともないから……」

「それに、日本人には信じられないでしょうけど、これでも昔よりは数段よくなっているんですよ。荷物検査機だって、みんな意味がないとわかっています。でも、文句を言ったって仕方がない。あそこにいつも3人くらい係員がいるでしょ。理屈から考えて彼らは必要ないんですけど、それを追求していったら、彼らだけでなく他にも不要になる仕事がたくさんある。意味がなくても既得権益があってそれを糾弾できない」

「つまり、どんなに優秀な人でも、自分がこの巨大な国を建て直そうという気持ちにはなかなかなれない。直していくのは膨大なエネルギーと予算と努力、大勢の人の理解が必要だからです。だから、壮大なシステムを元から直していく、なんていう正義感や使命感を持つのはあきらめ、“自分だけはここから抜け出そう”と思うんです」

コメント13件コメント/レビュー

前編も後編も全くその通り、と中島さんに全面的に賛同ならびに共感いたします。全編通じて偏りのない素敵なお話でした。(2014/11/09)

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「生きづらい中国で、美しく生きる人々」の著者

中島 恵

中島 恵(なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年、山梨県生まれ。1990年、日刊工業新聞社に入社。退職後、香港中文大学に留学。1996年より、中国、台湾、香港、東南アジアのビジネス事情、社会事情などを執筆している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

前編も後編も全くその通り、と中島さんに全面的に賛同ならびに共感いたします。全編通じて偏りのない素敵なお話でした。(2014/11/09)

インターネットの記事を読んでいると本当に中国人を嫌いになってしまいます。しかし本文の「日本より遙かにひとに過酷な環境でありながら、その辺を歩いている庶民の中にそういう清廉な人、ちゃんとした人がいるのである。」の様に素晴らしい人々も沢山いるはずです。中国の方が日本に来なくて日本人を知らずに批判するのと同じ様に日本人も素晴らしい中国人を知らずに中国人を嫌いになっているのではないかと思います。TV番組で中国奥地へ旅行した時の現地の方の人懐っこい表情やしぐさを見てもインターネットで見る中国人と全く違うのです。それに戦後、日本人孤児を自分の子供として大事に育ててくださった方々もいます。もっとしっかり人を見なくては、と感じました。(2014/11/06)

こちらで語られている「編集担当Y氏」は、かの「マイトY氏」なのでしょうか。そうであれば、次から次へ良いコラムを企画されますね。イトウさんとかふぇるさんとか。(2014/11/05)

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