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ねつ造されるから強靱な「民族の伝統」

  • 吉田 徹

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2014年11月7日(金)

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 スコットランドに行って、例えば古都エディンバラのオールドタウンを歩けば、タータンチェックのスカートを履き、バグパイプを吹く観光客向けのアトラクションに必ず出くわすはずだ。そして、私たちはそこに「スコティッシュネス(スコットランドらしさ)」をみて、スコットランドに来たという安心と満足を得ることになる。

 このスコットランドがイギリス(正式には『グレートブリテン及び北アイルランド連合王国』)からの「独立」を求めた住民投票は、9月に55%で否決されるに至った。

 本コラムで指摘されてきたように、スコットランドが住民投票に至ったのは複合的な要因が絡んだ結果だった。1990年代後半から地方分権と自治権付与の流れが生まれ、これに2000年代の不況と緊縮財政が続いたことで現政権への不満がたまり、「ロンドン(イングランド)が一人勝ちしているのではないか」という、スコットランド側の相対的な剥奪感が住民投票の実施に弾みを付けた。

 こうして生まれた機運を、90年代に入って選挙での躍進目覚しいSNP(スコットランド国民党)が争点化し、党首のサモンド・スコットランド首相の人気がこれを後押ししたことも大きいだろう。

 もっとも、国民国家として輝けるモデルだったイギリスにおいて、しかも21世紀のこのグローバル化の時代に、経済と人口の1割程度しか持たないスコットランドが、なぜまた自らの行政権や自治権を獲得しようとしたのか、不可解に思う向きもあるかもしれない。

 この疑問を解くには、まず「スコティッシュネス」とは何か、という問いに答えなければならない。なぜなら、住民投票や地域分権の議論のベースにあるのは、スコットランドはイギリスとは異なって独自の「スコティッシュネス」を持っているのだ、という共同体のアイデンティティだからだ。そして、こうした集合的なアイデンティティのシンボルが、タータンチェックやバグパイプ、あるいはスコッチだったりするのである。

 以下では、これまでのコラムとは異なる角度から、今後の「新しい国」がどのように作られるようになるのかを見てみたい。

「発明」されたタータンチェック

 スコットランドの「集合的なアイデンティティのシンボル」であるこうした「スコティッシュネス」は、実は歴史上稀にみるフェイクだった。

 これは英国人の歴史家ホブズボームの編纂した、その名も『伝統の発明』(1983年、邦訳は『創られた伝統』)と題された本で、ケンブリッジ大学のトレヴァー=ローパーが解題をして広く知られるようになった事実である(『伝統の捏造―スコットランド高地の伝統』)。

 トレヴァー=ローパーは、文化的・政治的にだけでなく、「スコットランドは人的にもアイルランドの植民地というのが正しい」と指摘している。もともとスコットランド人とは、(北極からさほど遠くもない)高地(ハイランド)に住むアイルランド人のことを指していたのである。

 当初は「野蛮人」にして「無教養」とされていたこのスコットランド人が、「誇り高く、自らの文化を持つ民族」と自己定義を始めたのは17世紀後半以降のこと。

 その手始めが衣装だった。もともと外来のものであったにも係らず、この時代以降、タータン柄のキルトがスコットランド固有のものとされるようになる。しかも興味深いのは、スコットランドでキルトが定着すようになったのは、イギリス人企業家が自社の労働者たちが動きやすいように仕立て直したことによる、という事実である(それまではフィリベグと呼ばれる単なる長い肩掛けだった)。

コメント5件コメント/レビュー

よく書けている記事だが、共感できる記事ではない。アンダーソンが想像の共同体と呼んだ視点は私もひとつの見方としてあっていいと思うし、日本の神道を取り上げた箇所は納得できる。しかし、それをひとくくりに「ねつ造」と呼ぶのは受け入れ難い。動機はどうであれ、考えた奴はみんな頭をひねって始めた。それが受け入れられているということは、そこの住んでいる連中から支持されているという証拠である。ありもしないことではなく、そこにあるものである。そのこと自体をフェイクであると呼ぶのは筆者の偏った見方に過ぎない。筆者は、ねつ造の意味を国語辞典で引いてみるべきではないか。(2014/11/08)

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いただいたコメント

よく書けている記事だが、共感できる記事ではない。アンダーソンが想像の共同体と呼んだ視点は私もひとつの見方としてあっていいと思うし、日本の神道を取り上げた箇所は納得できる。しかし、それをひとくくりに「ねつ造」と呼ぶのは受け入れ難い。動機はどうであれ、考えた奴はみんな頭をひねって始めた。それが受け入れられているということは、そこの住んでいる連中から支持されているという証拠である。ありもしないことではなく、そこにあるものである。そのこと自体をフェイクであると呼ぶのは筆者の偏った見方に過ぎない。筆者は、ねつ造の意味を国語辞典で引いてみるべきではないか。(2014/11/08)

良い記事だと思います。参考になりました。ただ、「江戸しぐさ」とかは受け入れたくないなぁと思ったり…。(2014/11/07)

スコットランド自体の分析への感想は「へえ~」にとどめておきますが、我が愛する日本の「伝統」については強く首肯します。知識人でもないがそちらにシンパシーを感じる者として、私も「フェイク」を一つ一つ暴くことが解決のように思っていましたが、確かに信じたいものしか信じない方も多いでしょうからなあ。嘘でもいいから夢を見たい心にいくら嘘だと力説してもはじまらない。心のほうを何とかしなけりゃなのでしょうな。勉強になりました。(2014/11/07)

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