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怪しくなってきた景気

アベノミクス第2幕の課題

2014年11月13日(木)

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 この連載では、前回まで人口問題を取り上げてきた。人口問題についてはまだまだ論じたいことがたくさんあるのだが、連載を休んでいるうちに、経済の方が怪しくなってきた。そこで、やや方向転換して当面の経済政策の課題を述べてみたい。

アベノミクスは第1幕から第2幕へ

 アベノミクスは2つのステージに分けると分かりやすい。

 第1幕は、2014年3月までの時期で、経済が順調に拡大し、アベノミクスの成果が大いに発揮された時である。これを支えたのが、「円安・株高」「公共投資」「駆け込み需要」という3点セットであった。

 安倍政権発足前後から、円安・株高が急速に進展した。これは、民主党政権からの政策スタンスの大転換が、サプライズ効果となって市場を動かしたからだと考えられる。株高は経済の雰囲気を明るくし、資産効果を通じて消費を増大させた。円安は製造業の収益を好転させ、輸入物価の上昇を通じて物価上昇率を引き上げ、デフレからの脱却に貢献した。アベノミクス第2の矢である公共投資も景気拡大に寄与した。2013年度の政府固定資本形成(公共投資・実質、以下同じ)は、15.1%の伸びとなった。経済全体の成長率は2.3%で、そのうち0.7%はこの公共投資の増加によってもたらされている。

 そして2014年4月からの消費税率引き上げを控えての駆け込み需要が2013年度の成長率を引き上げた。本年の内閣府「経済財政白書」は、駆け込み需要の規模を、消費だけでGDPの0.5%程度と推計している。この推計は消費だけだが、駆け込みは、住宅投資や設備投資にも発生していたと見られているので、実際の駆け込みの規模はもっと大きかったはずだ。

 この3点セットの効果により、アベノミクス第1幕においては、多くのエコノミストの当初の予想を大きく超えて経済情勢が好転した。この間、エコノミストたち(私も含めて)がいかにアベノミクス後の経済を見誤っていたかについては、本連載でも既に見たところである(「ESPフォーキャストはアベノミクスをどう見ていたか」2014年7月23日)

怪しくなってきた景気

 そのアベノミクスは、2014年4月以降第2幕に入ったというのが私の診断だ。

 円安・株高の動きは一本調子ではなくなった。10月末に、日銀の異次元緩和第2弾が発動され、再び円安・株高が生じているが、第1幕では歓迎一色だった円安に対しては、否定的な評価も目立つようになった。第1幕における円安が「過度の円高」の修正だったのに対して、第2幕での円安は「過度の円安」への動きだと考えられているからであろう。

 伸びきってしまった公共投資にはこれ以上成長をリードする力はない。内閣府の「平成26年度の経済動向について(内閣府年央試算)」(14年7月22日)によると、14年度の公的固定資本形成はマイナス2.3%と見込まれている。そして、駆け込み需要は、4月以降は逆に経済の足を引っ張っている。

コメント3件コメント/レビュー

エコノミストの方は、消費増税直前の駆け込み需要の反動で、1-3月期の成長率が高くなり、4-6月期の成長率を押し下げたと分析したがっている方が多いようだが、これは素人でもわかる最初から答えありきな分析。今回は公的年金の特例水準の解消が重なったことも、更に家計消費を抑え込む動きを加速した側面を忘れてはならないと思いますよ。3年をかけて解消という表現から誤解を招きがちですが、25年10月(支給月は12月)に第一弾の1%減、26年4月に第二弾の1%減(物価が上昇したので額面は0.7%減 同支給月は6月)と手取りペースで1.7%減+食料品など身近な生活必需食品は平均以上に値上がりしているのだから、年金受給世代の家計消費が冷え込むのは当たり前のことです。家計消費について調査するなら、特殊要因も考慮の上、年金受給世代と現役世代と分けて分析しないと正確な消費動向を捉えることはできないのではないでしょうか。(2014/11/14)

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「怪しくなってきた景気」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

エコノミストの方は、消費増税直前の駆け込み需要の反動で、1-3月期の成長率が高くなり、4-6月期の成長率を押し下げたと分析したがっている方が多いようだが、これは素人でもわかる最初から答えありきな分析。今回は公的年金の特例水準の解消が重なったことも、更に家計消費を抑え込む動きを加速した側面を忘れてはならないと思いますよ。3年をかけて解消という表現から誤解を招きがちですが、25年10月(支給月は12月)に第一弾の1%減、26年4月に第二弾の1%減(物価が上昇したので額面は0.7%減 同支給月は6月)と手取りペースで1.7%減+食料品など身近な生活必需食品は平均以上に値上がりしているのだから、年金受給世代の家計消費が冷え込むのは当たり前のことです。家計消費について調査するなら、特殊要因も考慮の上、年金受給世代と現役世代と分けて分析しないと正確な消費動向を捉えることはできないのではないでしょうか。(2014/11/14)

私は世界の基軸通貨であるドルベースで評価することにしている。実は金の現物に若干投資しているのであるが、ご承知のように最近の相場は下落の一途、しかし円ベースでは買値を上回る奇妙な状況だ。日本経済も確かに企業業績の好調と株の上昇で金持ちになった気分だ。しかし、それをドルで見ればどうなのか。カラ元気は後のツケが大きい。(2014/11/13)

第3の矢、岩盤規制等の対応を含む成長戦略実施なくば怪しくなるのは必定で、前から良く分かっていた事である。そもそも第1&第2の矢は劇薬であり、勇気を持った政治家・日銀総裁なら誰でもできる施策である。その劇薬効果の先行き効果・副作用の不安解消は、第3の矢の早急な実施実行だが、岩盤規制に守られた選挙基盤を持つ自民党に果たしてできるかは、安倍首相の固い決意と行動力次第と言えよう。さもなくば、先行きに懸念・不安のニオイを感じる経営者が賃上げに応じるとは到底思えない。(2014/11/13)

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