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市場が財政赤字問題を思い出す日

日本にとって「ラッキー」な状態はいつまで続くのか

2014年12月2日(火)

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 日本国債にとっての鬼門である海外格付け会社は、増税先送りの報道を受けて早速格付け見直し作業に着手し始めたようだが、長期金利は上がるどころか0.4%という超低水準でびくともせず、市場には0.3%や0.2%台への低下を予想する向きもある。マイナス金利が3カ月の短国から1年債へと延び、2年債までもマイナス金利となるに至っては、そんな予想も必ずしも強引とは思えなくなる。

 もっとも、壊れた市場の先行きを予想しても仕方がないかもしれない。日銀があれだけ国債を買いまくっていれば、市場機能が消滅するのも当たり前である。黒田総裁は未だに「流動性に問題は無い」と言い続けているが、10月末の追加緩和というサプライズにさえ反応しない国債市場において、円滑な売買が期待し得る流動性が保たれていないことは、もはや金融市場の専門家でなくても解るだろう。

国債不安はなぜ浮上しないのか

 これに対し、財政再建路線からの逸脱に日本の長期金利が反応しないのは、官民合計の負債水準の伸びが鈍化しているからだ、と分析する向きもある。公的債務のGDP比では日本が約230%と世界で断トツの首位であることは周知の通りだが、民間債務との合計で見れば約500%で、英国とほぼ同じレベルなのである。金融危機前は250%前後であったスペインやフランス、イタリアも、最近では350%近辺まで上昇してきた。米国も300%近くの水準にある。

 米国では家計や企業のデレバレッジが一巡して、再び民間債務が拡張方向に動き出している。欧州は銀行を中心としたレバレッジの修正ペースが遅い中で、公的債務もなかなか縮小しない。一方で日本では、公的債務は伸び続けているが民間債務があまり伸びないので、合計で見た増加ペースは欧米に比べて緩やかになっている。それが日本の債務問題への関心が薄れている要因だ、という解釈である。

 だが、その説明はこじつけのような気がしないでもない。国債不安とは、基本的に公的債務の問題から来る現象であるからだ。国債が売られても社債や株が買われる展開は十分に想定される。筆者も過去に、欧米市場で実際にそうした場面に何度か遭遇してきた。

 日銀の大量買入れによる需給構造以外に国債懸念が浮上しない別の要因として、むしろ財政赤字が今日の国際資本市場の視野外に置かれている、という状況を指摘してみたい。それは、日本にとって大変ラッキーなことであるが、その僥倖が来年以降永遠に続く保証がないことは、頭の隅に置いておく必要がある。

石油価格下落で財政赤字が懸念される国々

 金融危機といえば、サブプライム・ローン問題からリーマンショックまで米国の金融機関を主役とした激震が思い出されるが、その後、舞台を欧州に変えてギリシアなど南欧諸国の債務問題に世界が怯えた日々も忘れる訳にはいかない。米国は民間債務、欧州は公的債務の問題であった、と言って良い。

 ユーロ圏でPIIGSと蔑まれた国々の過剰債務への懸念も、ECBのドラギ総裁の「何でもやる」発言を契機として2012年秋以降沈静化し、資本市場は落ち着きを取り戻していった。日本の円安や株高の基調がそこを起点としたのは偶然ではない。アベノミクスはその絶好のタイミングに乗った現象であり、永続性を担保したものではなかったのだ。

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「市場が財政赤字問題を思い出す日」の著者

倉都 康行

倉都 康行(くらつ・やすゆき)

RPテック代表

1979年東京大学経済学部卒業後、東京銀行入行。東京、香港、ロンドンに勤務。バンカース・トラスト、チェース・マンハッタン銀行のマネージングディレクターを経て2001年RPテック株式会社を設立、代表取締役。立教大学経済学部兼任講師。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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