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ケインズ政策と財政健全化の二兎は追えない

選挙の争点を考える

  • 土居 丈朗

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2014年12月12日(金)

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 衆議院が解散された11月21日、安倍晋三首相は記者会見で、今般の解散を「アベノミクス解散」と称し、選挙戦に突入した。与党側は、現政権の「アベノミクス」の是非を争点としたい意向だが、野党側は「アベノミクス」に代わる対立した経済政策の軸を打ち出し切れていない。だから、「アベノミクス」の是非だけを判断材料として投票したいとは思わない有権者も多い。

 結局、衆議院の解散の引き金となった消費再増税の先送りについては、どの政党も賛同しており、与野党間の差異がなくなった時点で争点から消えた。その代わり、景気対策については、各政党の公約にテンコ盛りである。円安対策、中小企業対策、農林水産業対策、地方経済向け対策、低所得者対策……。

 「予算のバラマキ」はしないとか、経済再生と財政健全化を両立するとか、勇ましく言っても、景気対策となると、タガが外れたようにどの政党も、公約やマニフェストの中で多くの字数を割いている。

 これは、残念ながら民主主義のサガなのかもしれない。ブキャナン=ワグナー著『赤字の民主主義』は、その本質を見抜いている。なぜ政治家や政党は、選挙時に景気対策となると熱心に訴えるのか。それは、20世紀のイギリスの経済学者ケインズが提唱した学説に基づく政策(ケインズ政策)という麻薬の味をしめてしまったからである。

政治家の本質を見抜いた学者ブキャナン

 ご存知の方には釈迦に説法だが、ケインズ政策は、不況期には需要を喚起すべく、国債を発行してでも公共事業や減税を行い、好況期には国民の所得が増えて税収が自ずと増えるからそれを用いて国債を返済することを意図している。

 しかし、そううまくいかない。このことを、1977年に既に指摘していたのが、ブキャナンとワグナーの前掲書である。不況期に国債を増発してケインズ政策を行っても、好況期に国債を返済して累増を食い止められればよい。しかし、実際の民主主義は、好況になっても、税の増収分を使って国債残高を真っ当に減らそうとせず、むしろ政治家が国民に対して相変わらず財政支出を振る舞い続ける。

 選挙になると、政治家は、有権者の前で、痛みを伴うようなつらいことは言わず、ついついリップサービスをしたがる。そんな政治家が、不況期に増発した国債を好況期にまじめに減らそうとはしないだろう。その本質を、ブキャナンとワグナーは見抜いたのである。ブキャナンは、こうした政治を経済学的に分析する公共選択論の業績で、1986年にノーベル経済学賞を受賞した。

 だから、ひとたびケインズ政策で国債の増発を認めれば、ルールを定めないと際限なく国債が累増する恐れがあると警鐘を鳴らした。それは、日本だけのことではない。ちなみに、ケインズは、賢明な政策立案者が好況期には国債残高の累増を食い止めるとの前提(ハーベイロードの前提)に立っていたが、民主主義政治では自律的にそうなる保証がないことは、歴史が物語っている。

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