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「サンク・コスト」で考えるアベノミクス

改めて日本経済の課題を考える(2)

2015年1月15日(木)

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 経済学の考え方で、一般の人に馴染みが薄く、なかなか使ってもらえない概念に「サンク・コスト(埋没費用)」というのがある。既に投じられてしまったコストで、回収できない部分を指す。

 この考え方を使うと、「サンク・コストはもう済んでしまったもので、今さらどうしようもないのだから、これは忘れて現時点で最善の道を取れ」という教えが導かれる。

 例えば(仮の話です)、何億円もかけて東京国際フォーラムのような大規模建造物を作ったとする。ところが運営を始めてみると、思ったほど利用されず、冷暖房の光熱費がかかって毎年数千万円の赤字が発生することが分かったとする。この時、最善の道は何かというと、その施設を放棄することである。当初の建設費はサンク・コストだからどうせ回収できない。だとすれば、毎年の赤字をなくすことが最善の道だということになる。

 ところが、普通はそういう決断はできない。「せっかく何億円もかけたのだから、捨てるのはもったいない」と考え、赤字営業を続けてしまうのである。一度始めてしまった大規模公共工事を途中でやめられなくなる1つの理由は、サンク・コストという発想がないからかもしれない。

 同じようなことは我々の日常生活でも散見される。例えば、面白そうだと思って買った本が、読み始めたら全然面白くないことが分かったとしよう。そんな時我々は、「せっかく大金を払って購入したのだから、最後まで読まないと損だ」と考えて、無理に読み続ける。しかし、既に購入してしまったという事実は戻すことができないのだから、この時の最善の道は、直ちにその本を読むのを止めて、次に自分が最も読みたいと思っている本を読み始めることなのである。

選挙が終わったら実践モードに切り換えよ

 私は選挙後のアベノミクスにも同じようなところがあると感じている。選挙に「サンク・コスト」という概念を使えるわけではないが、「過去にとらわれずに意思決定をすべし」という点が似ているような気がするのである。選挙戦が進行中の「選挙モード」の中では各党とも、自らの実績を誇り、目の前の問題を取り上げ、明るい未来を語り、国民が敬遠しがちな議論は避けることになる。これは選挙なのだからと割り切るしかない。しかし選挙が終わったら「実戦モード」に切り替える必要がある。選挙そのものは終わってしまったことであり、元に戻すことはできないのだから、今となっては選挙時の議論はひとまず横において、現状を素直に観察し、「現時点で最も適切な政策選択は何か」ということだけを判断基準として経済政策の在り方を考えるべきである。

 例えば、現政権は、今回の選挙結果を「これまでのアベノミクスが信任を受けた」と理解するかもしれない。しかし、そうした理解に立って、従来の政策をそのまま進めようとするのは危険だ。なぜなら、現状から素直に導かれる実戦モードでの望ましい政策展開は、従来のアベノミクスの方向を修正し、アベノミクスに含まれていなかった政策を進めることだからだ。

 今回はそのうちの金融政策について考えてみたい。

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「「サンク・コスト」で考えるアベノミクス」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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