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改革迫られる社会保障制度

改めて日本経済の課題を考える(4)

2015年1月22日(木)

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 日本の社会保障は、多くの問題が複雑に絡み合っており、迷宮のようだ。誰もが改革の必要性を訴えているが、その改革は遅々として進まない。その全体像を把握し、解決の方向を示すのは簡単ではないが、私が重要と思うポイントに的を絞って説明してみたい。

社会保障の現状

 基礎的な事実認識として、社会保障の給付と負担のマクロ的な状況を見ておこう。

 2013年度の予算ベースで見ると、社会保障給付の総額は110.6兆円であり、まずはその規模(GDPの5分の1以上)の大きさに改めて驚く。その内訳は年金53.5兆円(48.4%)、医療36.0兆円(32.6%)、介護9.0兆円(8.2%)、子ども・子育て4.9兆円(4.5%)などが主なものである。一方、負担の方は、保険料が62.2兆円(60.3%)、国・地方からの財政投入が41.0兆円(39.7%)となっている。このうち、国が一般会計から社会保障関係費として支出している分は29.7兆円、全体の28.8%である。

 なお、年金の厚生年金・共済年金や、医療保険の被用者保険(組合健保など)は、企業も加入者の払う保険料と同額を払っている。保険料のうちの28.5兆円(全体の27.6%)は、こうした企業負担によるものである。

 よく知られているように、今後、高齢化が進展するため、この社会保障給付はさらに増大していく。厚生労働省「社会保障に係る費用の将来推計の改定について」(2014年3月)によると、社会保障給付費の総額は、2015年度109.5兆円(GDPの22.8%)から、2025年度には148.9兆円(同24.4%)となると見込まれている。負担も、保険料負担が2015年度の66.3兆円から2025年度85.7兆年へ、公費負担も2015年度の45.4兆円から2025年度60.5兆円へと増大する。

 この公費の一部が一般会計の歳出増加要因となる。国の社会保障関係支出は、一般歳出全体の32.7%(2015年度予算案)に達する最大の歳出項目となっている。しかもそれが、今後長期にわたってほぼ自動的に増加し続けるわけで、この社会保障支出の合理化なしに財政再建はあり得ないことは明らかだ。

 ただし、財政支出要因としての社会保障問題は、各方面で散々議論になっているので、本論では取り上げない。それ以外の点で、私が重要だと考える主なポイントを紹介しよう。

ポイント1 必要な社会保障のマクロ・リテラシー

 誰もが社会保障に強い関心を持っている。確かに、これからの経済社会の行方を考えた時、誰にとっても社会保障の行方は大問題である。しかし本当の問題は、多くの国民が社会保障について問題だと思っている方向と経済的に問題だと考える方向が全く異なっていることだ。

 毎年内閣府が行っている「国民生活に関する世論調査」に「政府に対する要望」という質問項目があるのだが、ほぼ毎年そのトップに来るのが「医療・年金等の社会保障の整備」である。最新の2014年6月の調査では、実に回答者の68.6%がこれを挙げている(複数回答)。新聞の投書欄を見ても、「年金だけでは安心して老後を迎えられるか不安だ」「消費税を上げるなら、それによって社会保障がどう充実するのかを示してほしい」といった意見が目につく。

 明らかに国民の多くは、社会保障をもっと充実し、安心して将来を迎えられるようにしてほしいと考えているようだ。したがって、選挙になると、各政党とも、社会保障の充実、安心した老後を約束しがちとなる。これに対して本当の問題は、現在の仕組みに種々の問題があり、このままの制度を維持することはできないことであり、それを安定的に維持していくためには、給付の合理化・削減または企業・勤労者の負担増、おそらくはその両方が必要となるということである。

 この社会保障の実態と国民意識の乖離は深刻である。いくら専門家が社会保障改革を訴え、そのための政策を議論しても、政治が民意に引きずられて「充実方向の政策」を提案し続けることになり、改革はいつまでたっても先送りされ続けてしまうからだ。

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「改革迫られる社会保障制度」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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