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世界同時デフレ局面入りへの懸念

市場に燻る「中央銀行敗北」ムード

2015年2月2日(月)

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 年初来、世界の資本市場では欧州動向に注目が集まっている。ECBによる国債買い入れ策の発動やギリシアの総選挙に加えて、1月中旬にはスイス銀行による突然の為替レート目標上限撤廃というサプライズもあった。昨年末にあれだけ騒がれたロシア懸念など、どこかに吹っ飛んでしまった印象すら受ける。

衝撃的だったスイス中銀の戦線撤退

 確かにスイス中銀の唐突な「戦線撤退」は衝撃的であった。中央銀行による予想外の行動は、昨年10月末に発表された日銀の追加緩和以来、今年に入ってインド中銀、トルコ中銀、カナダ中銀、そしてデンマーク中銀へと連鎖している。だがそんな中でもスイス中銀が投じた爆弾は、欧州市場では「核爆発に近い」と言われるほど、強烈なインパクトを与えるものであった。

 スイス中銀が2011年9月に設定した対ユーロ1.20の防衛線は、例えて言えば日銀が「対ドルで絶対に80円の壁を阻止する」と宣言していたようなものだ。その方針を信じて安心してスイスフランを売っていた人々は、一瞬にして地獄を見た。スイスフランの流動性は約1時間にわたって完全に消滅してしまい、買い戻すことが出来なくなったからだ。

 スイスフランのショート・ポジションを抱えていた欧米銀行の為替部門や一部のヘッジファンド、証拠金取引を行っていた個人投資家、その売買を取り持つFX業者、そしてスイスフラン建てで借金をしていた欧州の企業や家計など、幅広いセクターで事業継続不安、巨額損失の計上、そして経営破綻といった話題が市場を席巻している。

 この為替市場の大変動を見て、1980年代に欧州通貨間の裁定取引を行っていたディーラー時代を思い出した。当時、スイス系の大手銀行から「スイスフラン調達・ドイツマルク運用」など、為替と債券を絡めた取引を教えて貰い、図に乗って「スイスフラン調達、英ポンド運用」といったリスクテイクを実験的に行っていたのである。スイスフランは、その当時も超低金利通貨であった。

 こうした運用は、為替変動が最小限に収まることを前提として金利差を狙うもので、今風にいえば「キャリー取引」である。為替市場でスイス売り・マルク買いを行いそのマルクでドイツ国債を購入する取引は、確かに安定的な利益を生むことが多かった。

 だが、欧州国間の為替相場が大きく動くと大変な目に遭った。生半可な政治経済情勢知識では対応不能な投資手法であると痛感させられ、その度に冷や汗をかいたが、今回もスイスフランの高騰によってあるヘッジファンドが8億ドルの運用資産を吹き飛ばしたと聞き、金融市場は同じような間違いを何度も繰り返すものだ、とあらためて感じている。

拭えない中央銀行リスクへの不安

 スイスフランに関しては、警戒シグナルが全く無かった訳ではない。スイス中銀が為替介入を通じてユーロ建て資産保有額を急増させる過程で不安や不満を募らせた保守派スイス国民が、昨年同中銀に一定量の金保有を義務付ける案を国民投票で問うことになったことは、後講釈ではあるが、注意を喚起する大きな材料であった。結果的に否決されたものの、スイス中銀がこうした動きを警戒していたことは想像に難くない。

 百戦錬磨のプロでも上限撤廃は読み切れなかったとの声もあるが、中央銀行とはいえ約束を絶対に守れるものでもないことは、是非覚えておきたいものである。それは、筆者がここ数年抱き続けている「中央銀行リスクへの不安」と言い換えても良い。

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「世界同時デフレ局面入りへの懸念」の著者

倉都 康行

倉都 康行(くらつ・やすゆき)

RPテック代表

1979年東京大学経済学部卒業後、東京銀行入行。東京、香港、ロンドンに勤務。バンカース・トラスト、チェース・マンハッタン銀行のマネージングディレクターを経て2001年RPテック株式会社を設立、代表取締役。立教大学経済学部兼任講師。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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