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“老害の戯言”か、否か

遺言特集・編集後記

2015年1月29日(木)

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 一連の取材を通じて、「どうしてこの人は、取材を受けてくれたのだろう」と何度も思った。そんなことは初めてだった。

 日経ビジネスの昨年末の特集「遺言 日本の未来へ」に関わった。今年、戦後70年となるのに合わせて、終戦前の記憶がある各界の第一人者に、若い世代への「遺言」を残してもらおうという趣旨だ。連動企画として、日経ビジネスオンラインでも「戦後70年特別企画 遺言 日本の未来へ」連載をしているので、ご興味があればそちらもご覧いただきたい。

 特集に登場してもらった34人のうち、私は十数人の方のインタビューを受け持った。正直に言って、取材はなかなか難しかった。「遺言」というテーマだけに、神経を使ったというだけではない。耳が遠いなどの理由で質問と答えがうまくかみ合わなかったり、体調の問題でアポイントが当日キャンセルになったりと、「老い」を嫌でも実感する場面にも多く出くわした。

ベッドの上から発せられた言葉

 90歳を超えたある女性には、入居する高齢者専用住宅の個室で会った。ベッドの上に横になったまま、彼女は私の質問に対して、それは真剣に答えてくれた。身の回りの世話をしているスタッフが言うには、体を起こすと体調が悪くなるケースがあるという。それでもインタビューの時間は、1時間を超えた。

 取材をお願いした窓口の方からは「体調もあるので、基本的に取材などはすべて断っている。今回も、他の報道機関に『取材OKなのか』と思われるような表現はしないでほしい」と依頼された。

 「なぜ、この取材は受けてもらえたのか」と尋ねると「本人がどう思ったかは分からないが、企画を話すととても乗り気になったので」と言われた。

 ある男性は、鼻にチューブをつけた状態で都内の取材場所に現れた。酸素を送っているのだという。お体の状態について知らず、取材場所まで足を運んでもらってしまったことを詫びると、「こうしたテーマならば、お話ししないわけにはいかないと思った」とおっしゃっていただいた。

 パーキンソン病だという別の男性は、取材依頼後に入院し、いったんインタビューはキャンセルになった。だが経過を見て、退院直後に自宅で会ってもらえることになった。耳が遠いが、それでもいいかとも確認された。

 彼らにはみな、言いたいことがあったのだろうと推察はできる。だが、実際に会った私の個人的な印象で恐縮だが、彼らが自らの虚栄心や自己顕示欲のために取材に応じたようには思えなかった。

育った環境が違うから、見えるものがある

 「老害の戯言特集かと思った」

 昨年の12月29日に特集の掲載号が発行されると、ウェブ上には読者からのそんな感想が投稿された。気持ちは、とてもよく分かった。若年層には誰だって「年寄りの説教は御免こうむりたい」くらいの気持ちはあるだろう。

 「年の離れた世代は価値観が違いすぎて、話を聞いても自分の参考にはならない」といった思いは、正直に言って私の中にもあった。

 だが一連の取材を通じて、そうした自分の思いは改まった。全く時代背景の違う人だからこそ見えているものがあり、言えることがある。また、全く異なる時代を生きている人の中にも、自分に共通する思いを見つけることができる。そのことを改めて突き付けられた。

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「“老害の戯言”か、否か」の著者

中川 雅之

中川 雅之(なかがわ・まさゆき)

日本経済新聞記者

2006年日本経済新聞社に入社。「消費産業部」で流通・サービス業の取材に携わる。12年から日経BPの日経ビジネス編集部に出向。15年4月から日本経済新聞企業報道部。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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