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激動の1カ月から垣間見えた、欧州の脆弱な未来

ユーロ分裂懸念の裏に潜む構造問題

2015年2月3日(火)

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 2015年早々、欧州では大きなニュースが相次ぎ、世界の注目を集めた。本稿の公開は2月3日だが、今回は1月に欧州で起きた動きを振り返りながら、それらが今後の欧州に与える影響を考察してみたい。日本を含む世界経済にとっても関係があると考えるからである。

■1月7日 フランス・パリの連続テロ銃撃事件

 欧州激動の1カ月は、フランスで幕を明けた。1月7日、パリ中心部にある週刊紙「シャルリエブド」本社にイスラム過激派の男2人が侵入。会議中だった編集長ら9人を次々と撃ち殺した。犯人はその後逃走を図ったが、2日後の9日、人質を取り立て籠もった建物内で、警察部隊に射殺された。この日、パリ市内ではシャルリエブド襲撃犯の仲間とみられる男がユダヤ系の食品スーパーに銃を持って侵入。人質を取って立て籠もった。犯人は警察部隊に射殺されたが、4人の市民が犠牲となった。

 その週の日曜日、フランスのオランド大統領の呼びかけで、犠牲者を追悼する大規模なデモ行進が開催された。参加者は、パリ市内だけで150万人を超え、フランス全土で300万人を突破した。ドイツのアンゲラ・メルケル首相、英国のデビッド・キャメロン首相ら欧州各国の首脳も行進に参加。「表現の自由」と「テロへの徹底抗戦」を誓い、欧州が一致団結することを確認したーー。

1月11日、フランス・パリでのデモ行進の様子

 日本も、イスラム過激派組織「イスラム国」によって日本人2人が殺害されるなど、過激派テロとの戦いはもはや他人事ではなくなっている。今回の事件も、フランスのみならず、欧州が過激派テロとの戦いに本格的に巻き込まれることになったことを象徴する出来事となった。

 モロッコやアルジェリアといったイスラム系住民が多く住む国を植民地としていたフランスは、イスラムとの間には複雑な歴史的背景を抱えている。フランスに住むイスラム系移民は400万人超と欧州で最も多く、イスラムとの距離は物理的にも心理的にも近いとされてきた。

 その流れが変わってきたのは最近のことだ。背景には、イスラム過激派組織の肥大化がある。特に、過激派組織「イスラム国」はインターネットを通じて欧州に住む若者を積極的に勧誘している。この結果、シリア内戦に参加しようと出国したフランス国籍を持つイスラム系移民が急増。その数は1000人規模に達したと言われている。

「人の自由な移動」とどう折り合いをつけるか

 こうした流れを断ち切るため、フランスは2014年9月、米国などと共同で過激派組織「イスラム国」への空爆に踏み切った。しかしその行為が、今回のテロの遠因となった面は否定できない。

 今後テロの危機に直面するのはフランスだけではない。フランス同様に多くのイスラム系移民が住むドイツや英国でも、戦地帰りの若者は着実に増えている。テロが身近な危機として存在感を高めている。

 欧州各国では今、テロに対する警戒感がかつてないほどに高まっている。フランスのテロ事件の翌週、ベルギーではイスラム過激派の武装集団がテロを計画していたとして当局の捜索を受け、銃撃戦の末に容疑者2人が射殺された。英国でも昨年8月からテロに対する警戒レベルは2番目に高い状態が続いている。

 ロンドンに住む筆者も、国外出張から戻った際の英国の入国審査は日増しに厳しさを増していると実感する。従来、ほとんど無審査だった欧州各国への入国審査でも、最近は質問される機会が増えた。

 今後は、さらに各国の入国審査が厳格化される可能性が高い。具体的な方策は決まっていないものの、フランスのテロ事件を機に発足した欧米閣僚のテロ対策会議では、入国審査を厳しくする声もあがっている。

 ところが、これは従来EU(欧州連合)が掲げてきた「人の自由な移動」の理念に反する。国境を越えた人とお金の自由な往来を通して、経済を一体化し、繁栄を図るというEUのこれまでの方針は、テロ対策を強化すればするほど難しくなる。欧州には、「テロ」の問題との向き合い方が、経済成長にも影響を与えかねない問題として、今後常に存在し続けることになるだろう。

 さらに欧州の問題は、一体化による繁栄を目指した肝心の経済自体が、現在は良好な状態であると言えないことだ。2008年の世界金融危機以降、米国や英国がいち早く経済回復に向けた道筋をつけたのに対して、欧州経済は停滞、デフレ懸念がくすぶり続けている。

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「激動の1カ月から垣間見えた、欧州の脆弱な未来」の著者

蛯谷敏

蛯谷敏(えびたに・さとし)

日経ビジネス記者

日経コミュニケーション編集を経て、2006年から日経ビジネス記者。2012年9月から2014年3月まで日経ビジネスDigital編集長。2014年4月よりロンドン支局長。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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