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マイホームの夢、かなえません

顧客の言うことを聞かない工務店

2015年2月4日(水)

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長崎の工務店、小川の家の小川勇人社長

 経営理念に、「顧客志向」や「顧客第一主義」を挙げる会社は無数に存在する。だが、その徹底ぶりとなると、先頃取材した小川の家に並ぶ会社は少ない。

 小川の家は、長崎市内に事務所を構える工務店だ。従業員数5人と、規模は小さい。ただ、少しずつではあるが、全国的にその存在を知る人が増えている。3年ほど前からは、損益分岐点の年間4~5軒を超えて、年間10軒前後を安定的に受注できるようになった。

 人づてに評判を聞きつけ、昨年暮れに東京の編集部から、小川勇人社長のいる長崎に向かった。「施工主が描くマイホームの夢は、かなえない」と言う小川社長から、詳しく話を聞くことにした。

「ひきこもりの原因は間取りにあり」

 小川社長はかつて、父親の経営する小川工務店で働いていた。熊本大学を卒業後、準大手ゼネコンで1年間勤務した後、1997年から家業を手伝うようになった。

 当時、小川工務店は自社で分譲地を造成したものの、不景気で思うように住宅を販売できない時期が続いていた。購入希望者が見学に来るが、その大半は契約しなかった。

 「やっぱり家はいらない」と言われ続ける中で、小川社長は「家は何のために存在するのだろうか」などと自問するようになった。

 「子育て世代」の間で、新築住宅の需要が高いことから、小川社長は「家とは子供を育てる器だ」と考えるようになる。しかし、世の中で販売されている住宅の多くは、子育てに向いていないと思わざるを得なかった。小川工務店が手掛ける住宅も例外ではなかった。

 大半の施工主が求めるのは、部屋数が多くて、安い住宅だ。だが、小川社長は「部屋数を多くすると、子育てに支障を来す」と考えていた。個室があれば、確かにプライバシーは守られる半面、親子の対話は失われる。そして子供がひきこもってしまったり、キレやすくなったりするというのが、小川社長の持論だ。

 それでも施工主は、「部屋数の多い住宅を、安く建ててほしい」と要求してくる。受注を勝ち取るには、安い建材を使って、価格を抑えるしかない。だがそうした建材は、目の痛みや湿疹、呼吸器疾患といった、シックハウス症候群の原因となる化学物質を含んでいるものが多い。

 小川社長は「子供がすくすくと育ち、健康的に暮らせる住宅を建てませんか」と提案したが、「あなたのこだわりはどうでもいいから」と言い返された。仕方なく我慢しながら、意に反する住宅を建てた。そうしなければ、発注してもらえなかったからだ。

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「マイホームの夢、かなえません」の著者

吉野 次郎

吉野 次郎(よしの・じろう)

日本経済新聞社記者

1996年、日経BPに入社。2007年から日経ビジネス編集部で電機業界や自動車業界、企業の不祥事を担当。2015年4月から日本経済新聞社電子編集部に出向中。産業、経済事件を中心に取材・執筆する。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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