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男性のレイプ被害者「ゼロ」の日本

口に出せず、ケアも受けられない

2015年3月23日(月)

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 マスキュリストとしての立場から、目指すべきはあくまでも男女平等の徹底であると私は考えている。レイシズム(人種差別)と同じベクトルでセクシズム(性差別)も消すということだ。女性の被抑圧と同時に男性の被抑圧もなくさなくてはならない。男性差別撤廃のゴールは、政治家の男女比、管理職の男女比、自殺者における男女の割合、片親家庭の父母の割合、離婚後に親権を取る父母の割合、これらがすべて等しく5:5になることだろう。

 たぶん私の言っていることは、30代以上の人間には突拍子もなく思えるかもしれない。でも、10年後にはさらにリアルに感じるだろうし、実現できるはずだ。例えば徴兵制の男女平等は、今は突拍子もなく思えても、アファーマティブ・アクションで女性の大臣の数が全体の半分になり、管理職の半分が女性になった時、たぶんそうは思わないだろう。とりわけ、(男性に奴隷意識でもない限り)男女で決めた戦争なのに男性だけが徴兵されるという選択に賛同はしないはずだ。

 ここで、男性解放(メンズリべレーション)をめぐる状況を整理しておきたい。立場や考え方から、大きく4つのグループに分類できる。

  1. 「男性差別問題の当事者」。例えば離婚時に親権がとれない男性、父子家庭援助が受けられない男性、性被害を受けた男性など。当事者のグループは、差別撤廃をしていくうえで必要な母体である。
  2. 「男性差別撤廃派」。個々の差別だけでなく、社会全体的な男性差別も含めてなくそうという理念を持つ人たち。フェミニズムの男女観に対しては、男性を一方的強者、女性を一方的弱者と見る点について批判的である。「男性差別」や「男性の権利」という言葉を使う。日本においても大部分のマスキュリストはこれに属する。
  3. 「メイルフェミニスト(男性のフェミニスト)」。「男たちの意識革命」の言葉を借りれば「女性たちの言うとおり、男は長い間、女性の権利を押さえつけてきた。だから男性解放とはそうした過去への贖罪として女性運動を支援することにある」と考えている男たち。彼らは男性の被抑圧を認めることができないので「男性差別などない」と言う。日本の男性学を名乗る学者は大体この系統に属する。
  4. 「復古主義者たち」。「女は家庭に帰れ。男は権威と力を取り戻せ!」と叫ぶ。

 分かりやすい例として、DV被害支援を挙げよう。

 「男性差別撤廃派」は、男性のDV被害者も女性と同じように保護しようと運動する。しかし「メイルフェミニスト」には、そもそも女性による男性へのDVなど見えない。「復古主義者たち」は、DV法そのものをつぶそうとする。

 アメリカの男性運動の主体で圧倒的に多いのは「男性差別の当事者」と「男性差別撤廃派」である。 一方、「メイルフェミニスト」と「復古主義者たち」はマスキュリズムの妨害勢力という点で同根である。彼らには、過去において男性は強者で女性は弱者であるという謎の大前提があり、根本的に男女の能力を互角だと見ていない古い世代である。

 女性差別撤廃とともに、日本でこれから増えていくのは(現状でも増えているが)「男性差別の当事者」と「男性差別撤廃派」である。

 もし男性差別を感じたり、その当事者になったりしても、「復古主義者たち」にはならないでほしい。フェミニズムを批判すると復古主義者に吸収されたり、同調してしまったりする人が結構いる。しかしそれでは男性差別はなくならないし、解決しない。時計の針を元に戻すことなど不可能だし、性差別の根本的な解決にはまるでならない。日本ではマスキュリズムを担う「男性差別撤廃派」が貧弱なので、男性差別に疑問を持った当事者は復古主義に流されてしまうが、それでは何の解決にもならない。

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「男性のレイプ被害者「ゼロ」の日本」の著者

久米 泰介

久米 泰介(くめ・たいすけ)

翻訳家

1986年、愛知県生まれ。関西大学社会学部卒、ウィスコンシンスタウト大学人間発達家族学MS(修士)取得。専門は社会心理学、男性のジェンダー、父親の育児。翻訳書にワレン・ファレル著『男性権力の神話』

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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