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利上げしたくて仕方がないFRB

淡々と進むドル高の行方

2015年6月2日(火)

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 先月、イエレンFRB議長は「見通し通りに経済が改善すれば年内に利上げすることが適切だ」と述べ、6月の利上げ確率はほぼ消えたものの、下半期以降の利上げが当局のメイン・シナリオであるようなニュアンスで市場に伝わった。

 だが、議長は常々「利上げ判断は経済指標次第だ」と述べており、同じ講演の中でもその考えを繰り返している。つまり、年内利上げはFRBの予想が当たることを前提とした希望的観測に過ぎないが、ヘッドラインしか見ない人々にそれがあたかも既定路線であるかのような印象を与えたことは否めない。 

 またフィッシャーFRB副議長も「利上げ判断はデータに基づいて行われるものであり、その時期だけに過度の関心を抱くのは適切でない」と警告する一方で、2018年末には政策金利が3.25-4.0%の水準に上昇するだろう、との見通しを示している。これもまた、予想を都合に合わせて取捨選択しているような発言構成になっている。

 政策決定の鍵を握る主流派がこういう言い方をすれば、市場が米国金利上昇とドル高への相場観を強めるのは当然である。ドル円は先週124円を超えて2002年12月以来の水準となり、2007年7月以来の水準を超え、ユーロドルは1.09を割り込んで再びパリティ(等価)に向かって下落し始めている。

「のりしろ」作りとしての利上げ

 だが、この二人の重鎮の発言には、米国経済が思うように改善しない苛立ちと、早めに政策金利を正常化したいという焦りが、それぞれ滲み出ているように思われる。

 昨年秋頃のシナリオに基づけば、今頃は利上げ準備万端の筈であった。だが悪天候や港湾ストに加えて、ドル高による企業業績の低迷や原油安による設備投資の削減などで、同国の実体経済は描かれた軌道から大きく外れてしまった。

 それでもイエレン議長は、第1四半期の低迷は一時的要因によるものだと強調し、第2四半期以降は順調な成長軌道に戻る、との見方を採っている。6月がダメでも9月または12月には利上げできる、との思いが前述した発言に繋がったのだろう。

 従来の同議長の利上げに関する発言には、資本市場の混乱を避けるための「事前警告」的なニュアンスが含まれていた。低水準で推移する長期金利が利上げでパニックを起こし、株式市場や新興国通貨などへの影響を通じて実体経済を揺さぶることを避けたい、との思いが含まれていたように思われる。それは、2年前の「Taper Tantrum」の再現を回避する、という強い意志の表れでもあった。

 だが、昨今では「ひとまずゼロ金利からの脱却だけは早めに実施しておきたい」との意味合いが強まってきた印象を受ける。その後の利上げペースは緩慢になる、と何度も繰り返しているのも、「取り敢えずは利上げする」のが最優先課題になっていることを示唆している。

 それは、議長らのFOMC主流派が必ずしもタカ派の主張に近づいてきたことを意味するものではなさそうだ。恐らくその心中には、2007-8年に防げなかった資産バブルへのトラウマとともに、兎に角利上げしておけば今後の景気後退の際に量的緩和ではなく利下げで対応できる、という読みがあるのだろう。即ち利上げは、今後の政策的な「のりしろ」作りなのである。

 だが、経済指標はまだFRBサイドに与していないように見える。3月末にこのコラムで指摘したような米国経済のもたつきは、いまなお継続しているのが実態だ。筆者は12月利上げの可能性が高いと思ってはいるが、低調なマクロ経済に即して考えるならば、来年に先送りされたり、来年に入っても利上げの目途が立たなくなったりするような、穴馬的なシナリオも有り得る。

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「利上げしたくて仕方がないFRB」の著者

倉都 康行

倉都 康行(くらつ・やすゆき)

RPテック代表

1979年東京大学経済学部卒業後、東京銀行入行。東京、香港、ロンドンに勤務。バンカース・トラスト、チェース・マンハッタン銀行のマネージングディレクターを経て2001年RPテック株式会社を設立、代表取締役。立教大学経済学部兼任講師。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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