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慰安婦は棚上げ、焦点は北朝鮮に

迫る米韓首脳会談

2015年6月3日(水)

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 朴槿恵(パク・クネ)韓国大統領が6月14日から5日間の日程で米国を訪問する。16日にバラク・オバマ米大統領と首脳会談を行う。その後、テキサス州ヒューストンに立ち寄り、先端医療や航空宇宙関係施設を視察する。
("Statement by the Press Secretary on the Visit of President Park Geun-hye of the Republic of Korea," Office of the Press Secretary, 5/26/2015)
("Park, Obama Set to Tackle Alliance, North Korea Tension," The Korea Herald, 5/27/2015)
("Will Pres. Park get a red carpet in the US like Shinzo Abe did?" The Hankyoreh, 5/13/2015)

 さる4月の安倍晋三首相の訪米で日米同盟に「質的変化」("qualitative change")が生じた。首相が「歴史認識問題」や「慰安婦問題」で「河野談話」や「村山談話」を踏襲すると確約したことで、米側の「わだかまり」が解けたからだ(「安倍首相の議会演説で米国の『歴史認識問題』は決着」参照)。これを受けての朴大統領の訪米である。

 朴大統領の訪米は就任直後の13年5月以来、2度目。2年前を振り返ってみる――。朴大統領は、13年5月に訪米した際、米議会で演説し「歴史問題に端を発した対立が一層深刻になっている。歴史に正しい認識を持たなければ明日はない」と英語で訴えた。日韓の対立に米国を巻き込むことで対日外交圧力を強めようとした。

 ワシントンも韓国初の女性大統領の初の公式訪米ということもあって歓待した。朴大統領に思いの丈を述べさせる余裕を見せた。朴大統領が「慰安婦問題」を人権問題、とくに女性の人権に絡めたことが功を奏した面も見逃せない。

「日韓が歴史認識でツノ突きあっている場合ではない」

 だが米政府はそれ以後、日韓対立が膠着することに警戒心を抱き、事あるごとに日韓双方に譲歩を促してきた。米政府は、朴大統領が慰安婦問題に執着しなければならない韓国国内の政治社会情勢を理解している。しかし、朴大統領が安倍政権に対して「新たな謝罪・補償を執拗に求める頑なな対応」(米国務省OB)に苛立っているのも事実だ。いわゆる「Korean fatigue」(韓国に対する嫌気)である。

 そして今年4月の安倍訪米でワシントンの空気は一変した。米外交はどこまでもストレートでプラグマティック(実際的)だ。変わり身も速い。

 東アジア情勢は風雲急を告げている。例えば中国は南シナ海・南沙(スプラトリー)諸島で埋め立て工事を急ピッチで進めている。一方、朝鮮半島では北朝鮮の中枢で異変が起こっている。米国防総省元高官の一人はこう指摘する。「日韓が『歴史認識問題』などでツノ突き合わせている場合ではなくなってきた――こうした認識がワシントンで急速に広がっている。ケリー国務長官と尹炳世(ユン・ビョンセ)韓国外相が2月7日に話し合い、6月の米韓首相会談が急遽決まったのはこのためだ。朴大統領が再び『慰安婦問題』に触れ、日韓の和解を渋るようであれば、日米防衛協力体制を踏まえた日米韓同盟の再構築は遅れるばかりだ。これがオバマ政権の認識だし、この点では民主、共和両党とも一致している」。

 ケリー国務長官、アシュトン・カーター国防長官が相次いで訪韓し、緊迫する北朝鮮情勢への戦略を練る必要性を朴大統領に直接、訴えた。返す刀で両長官は、来るべき訪米では朴大統領が「慰安婦問題」を蒸し返さないよう求めた可能性大だ。

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「慰安婦は棚上げ、焦点は北朝鮮に」の著者

高濱 賛

高濱 賛(たかはま・たとう)

在米ジャーナリスト

米政治・経済・社会情勢を日本に発信している。1969年、米カリフォルニア大学卒業、読売新聞社に入社。米特派員、総理官邸・外務省担当キャップ、デスクを経て、調査研究本部主任研究員。98年からUCバークレー校上級研究員。同年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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