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「納品した椅子が破裂した!」

30代のママを痣と傷だらけにした椅子地獄(後編)

2015年6月16日(火)

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30キロある椅子を回収、倉庫で分解、部品を交換、再度組み立て、カジノまで運ぶ。社員2人がやってくれた

前回の記事から読む)

 得意客のカジノから椅子2000脚の大型受注を獲得した筆者。過去最大となる40万ドルに及ぶ契約で、将来の成長は約束されたかに見えた。ところが、納品した椅子が次々と壊れるハプニングに襲われる。ゆうに150キロを超えていそうな巨体の客が座るのに耐えられなかったのだ。直ちに椅子に改良して、再び納めることになった。

 キャッシュの心配をしながら、椅子の出荷を再開したが、1日100脚を組み立てるのはなかなか難しい。数日後、なんとか出荷数を増やそうと、朝から倉庫にこもり、椅子を組み立てていた主人へカジノからまたしても怒りの電話がかかってきた。

 「椅子が破裂したぞ!」

 意味不明である。椅子が壊れることはあっても破裂などするのだろうか。首をひねっている場合ではない。主人は汗まみれのTシャツを着替え、車を飛ばしてカジノへ急行した。

 新たな欠陥が発覚したのは、スピンボードというパーツである。これは椅子を回転させるためのもので、クッションの下と椅子の脚との間にある。椅子を回転させていると、スピンボードの上部鉄板と下部鉄板が外れ、椅子のクッション部分から上が落ちてしまう。ゆっくり外れるわけではなく、椅子の回転中に突然落ちるので、確かに椅子が破裂したように見える。

 破裂した椅子とともに帰宅した主人はさすがに落ち込んでいた。長年の顧客に対する信用の失墜。もしかしたら別のパーツや箇所で欠陥が起こるのではないかという漠然とした不安。どうやって解決すればいいのだろうかという焦り。その解決策をすぐに見いだして顧客のカジノに連絡しなければいけないプレッシャー。絶望的にもなろうというものである。

 だが落ち込んでいる暇はない。絶対に避けなければならないのは、注文のキャンセルと前金の返金だ。前金は中国工場へほとんど支払ってしまい、弊社の手元にはない。返せと言われても用立てられない。何が何でも解決先を見つけなければならない。

 気を取り直した主人はカジノの上層部に1人ずつ電話をかけた。必ず何とかする、心配ない、と説明する。並行して破裂した椅子を一体どうしたものかと考える。カジノがもともと使ってきた古い椅子を分解してパーツを取り出し、弊社の椅子のパーツと比べてみた。

 何かヒントが得られるはずだという読みは当たった。カジノで長年使われていた椅子のスピンボードの鉄板は、弊社のものと比べかなり厚かった。しかも、巨体を乗せて回転させなければいけないという特有の問題を解決するため、短冊型の鉄を一つずつ手作業で追加溶接し、強度をさらに高めるという念の入れようだった。

 並べてみると弊社のスピンボードが弱いのは当然だと分かった。カジノ向けに椅子を販売している他社に探りの電話を入れる。海外、主に中国から椅子を輸入しているものの、カジノ向けの椅子としては強度が足りないので、それぞれカスタマイズして販売しているという。

 ここへ来てようやく、私たちの椅子ビジネス参入への考えが甘かったと悟った。弊社は品質管理に気を配っている方だと思っていたが、「椅子は椅子、見栄えさえ良ければ、中身はどれも一緒」という考えがあったことは否めない。大間違いだった。

コメント7件コメント/レビュー

いつも楽しく拝読しています。何ヶ月も音沙汰がなく、夜逃げでもされたかと心配してましたが、痣だらけ傷だらけでもお元気そう(?)で何よりです。椅子地獄、再発なきことお祈りしますが、ちょっと楽しみでもあります。引き続き卒倒奮闘切り抜け頑張ってください。(2015/06/19 14:04)

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「「納品した椅子が破裂した!」」の著者

上田 尊江

上田 尊江(うえだ・たかえ)

Artform LLC CFO

マネジメントコンサルタント、オンライン証券会社の創業、海外企業の日本参入支援など手がけた後、2006年より渡米、TransAction HoldingsおよびartformのCFO。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

いつも楽しく拝読しています。何ヶ月も音沙汰がなく、夜逃げでもされたかと心配してましたが、痣だらけ傷だらけでもお元気そう(?)で何よりです。椅子地獄、再発なきことお祈りしますが、ちょっと楽しみでもあります。引き続き卒倒奮闘切り抜け頑張ってください。(2015/06/19 14:04)

毎回思うのですが見込みが甘すぎるとしか言いようがないです。アメリカでなくてもどの国でも同様の事が頻発するでしょう。椅子でも何故そんな単純なミスを起こすのか理解できないです。無駄な努力しているとしか言いようがない。新しい事やるときはライバルの商品を分解してしっかり研究するのは当たり前だし、強度なんてアメリカでなくても神経質になる部分です。(2015/06/16)

椅子はもう懲り懲りと言って・・・。これはいただけませんね。カジノ椅子に関する製造販売ノウハウを修得したらベガス一のカジノ椅子業者になれたかもしれないのに(笑)。業務改善のスパイラルに終わりはないのですよ。懲りて止めていたら、いつも新規事業の立ち上げトラブル対応ばかりで、安定収益源にまで至らないじゃないですか。ご主人の言う、今度こそは大丈夫、もいただけませんね。一生勉強、ぐらいのスタンスが望ましいのではないですかね。(2015/06/16)

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