「攻めの経営支える戦略法務」

合併合意後に第三者が現れた時の注意点

シリーズ 三角合併(合併対価の柔軟化) 第3回

バックナンバー

2007年4月19日(木)

1/2ページ

印刷ページ

 5月1日から三角合併が解禁になります。日本の経済界では「三角合併が始まると外国企業から敵対的買収をかけられるのではないか」と見る向きが多いようです。しかし、このコラムの前回記事で紹介されているように、これまで明らかになった税制面から見れば、外国企業が三角合併を利用する例がそれほど多くなるとは考えられていません。また、対象会社の取締役会が合併契約を承認しなければならないことを考えれば、三角合併が敵対的買収の場面において用いられる可能性はあまり高くないと思われます。

 では、日本企業が“友好的”に三角合併を利用して、外国企業の傘下で事業を発展させたいと考える場合には、どのような点に留意すればよいのでしょうか。一例として、企業間で合併の基本合意に関する契約を締結した後に、別の企業が買収に名乗りを上げた場合にはどう対処すればよいのかを考えたいと思います。

 例えば、外国企業の日本子会社(在日法人)A社と日本企業B社が合併の基本合意に関する契約を締結して対外的に公表した後に、ライバルである日本企業C社がB社の株式についてTOB(株式公開買い付け)をかけてきた場合を想定しましょう。

フィデュシャリーアウト条項とは?

 通常の場合には、C社はTOBに際してB社の株価に一定の金額を上乗せした(プレミアムを付けた)現金によるB社株の買い取りを提案するはずです。B社の株主の中には、三角合併によって在日法人A社から外国親会社の株式を受け取るよりも、むしろ国内のC社に現金でB社株を買い取ってもらった方がよいと考える人がいるかもしれません。あるいは、C社の傘下に入った方がB社の企業価値が高まると予想されることもあり得ます。

 この場合にB社の経営陣はどう判断すればよいのでしょうか。既にA社と合併に関する契約を締結した以上、C社の買収提案をはなから拒否すべきか。あるいは、A社との間で条件の見直しについて協議を申し入れるべきか。

 ここでB社の経営陣には注意が必要となります。仮にC社の買収提案がB社の株主にとって非常に魅力的な場合には、A社との合意を盾に単にC社の提案を拒否するというB社の経営陣の行為は株主から非難されかねません。特に、他の可能性を検討することなく、安易にA社と合意してしまっていたような場合には、事と次第では株主代表訴訟になる可能性もあります。こうした事態を防ぐために導入が検討されるのが、「フィデュシャリーアウト(Fiduciary Out)」と呼ばれる契約条項です。

 フィデュシャリーアウト条項とは、例えば、企業間で合併に関する契約を締結した後に、他社からそれを上回る良い条件で買収提案を受けたような場合に、既存の契約を破棄して、新しい買収提案の方に乗り換えることを可能にするような条項を言います。先ほどの例で言えば、A社との合併契約にフィデュシャリーアウト条項を加えていれば、B社の経営陣はA社との合併契約を破棄して、C社のTOBに賛意を表明することも選択肢の1つにできるわけです。

経営陣には善管注意義務が課されている

 もちろん、フィデュシャリーアウト条項を定めておけば、万事丸く収まるという訳ではありません。C社の提案とA社との合併のどちらが真に有利かを判断するのは必ずしも容易ではないからです。また、例えば、C社の買収提案よりもA社との合併の方が明らかにB社の株主にとって利点が大きいのにもかかわらず、B社の経営陣がC社の提案に賛同した結果、株主代表訴訟などが起きた場合には、B社の経営陣はかえって善管注意義務違反に問われる可能性があります。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
この記事を…
内容は…
コメント0件受付中
トラックバック
著者プロフィール

藤原 総一郎
(ふじわら・そういちろう)

藤原 総一郎 1972年生まれ。1995年司法試験合格、96年東京大学法学部卒、98年長島・大野法律事務所(現長島・大野・常松法律事務所)入所、2003年米コロンビア大学ロースクール卒、2004年長島・大野・常松法律事務所復帰、2006年同事務所パートナーに就任。外国企業による日本の上場会社の買収や上場会社のMBO(経営陣による企業買収)など多数のM&A案件を手がけ、『アドバンス新会社法(第2版)』(共著、商事法務)や『M&Aを成功に導く 法務デューデリジェンスの実務』(共著、中央経済社)など著書・講演多数



このコラムについて

攻めの経営支える戦略法務

世界的な規制緩和の進展で、企業を取り巻く競争環境は激変した。企業にとっては、もはや規制に従えば事業を確保できた時代は終わった。自らビジネス法務を駆使して、業容拡大のための事業モデルを構築できる企業だけが競争優位に立つ。そんな「攻めの経営戦略」に欠かせないビジネス法務を一線で活躍する法律専門家に、独自の視点で解説してもらいます。

 

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン