「数字で見る男と女の働き方」

【第5回】「給料は交渉次第」の米国
生涯賃金で数千万円の差

会社に自分の価値を認めさせる個別交渉術

バックナンバー

2007年5月9日(水)

1/3ページ

印刷ページ

 今回は、米国のビジネスパーソンと勤務先の“交渉”について見ていこう。筆者は昨年夏から、米国のビジネスパーソン約40人に仕事と私生活の両立について取材してきた。日本と大きく違うのは、個別交渉が多いことだ。女性だけでなく男性も、家族と過ごすための休暇や短時間勤務を要求している。

 「報酬を減らす代わりに、休日を増やしてほしい」。製薬業界で働く30代の男性は、こう話す。彼の家族は、医師の妻と2人の子供。妻のキャリアを優先し、彼が家事と育児を担当するため、これまでは残業のない時間給の職に就いていた(記事詳細はこちら)。トップスクールのMBA(経営学修士)を持っているから、頻繁にヘッドハンターから連絡が入る。

 筆者がインタビューしたのは、彼が転職の条件交渉をしている時期だった。報酬や仕事の内容は問題なかったが、彼の不満は休日の日数。先方の提案では、妻よりも休日が少なくなる。家族を優先したい彼は、休日の日数について先方と交渉を始めたところだった。

 能力に自信がある人ほど、強気の交渉ができる。ある大学教授は、育児のための休暇を半年間取得した。勤務先には男性の育児休業について規定はなかったが、所属学部と交渉して休みを認めさせた。彼は既に質、量ともに十分な論文を執筆していたから、キャリアダウンの心配は全くなかったという。彼の妻も大学教授で、仕事と私生活の両立のため、双方が仕事量やスケジュールを調整している。

AnnArborの街並み

 ちなみに夫婦の場合、男女どちらのキャリアを優先するのか。ミネソタ大学のフィリス・モーエン教授らの調査によると「夫と妻、どちらのキャリアを優先したか」という質問に対し「夫を優先した」と答えたのは男性の54%、女性の53%。一方で男性の31%、女性の30%は「どちらも優先していないか、交代で優先した」と答えた(『It's about time: Couples and careers』、Cornell University Press、2003年)。調査対象は、ニューヨーク州北部の高学歴カップル835組。半数は夫のキャリア優先だが、既に3割はお互いのキャリアの両立を図ろうとしている。

 共働きが多く、まだ少数派ではあるが妻のキャリアを優先することさえある米国人カップル。日本に比べると、個人志向が強いのが特徴だ。働き方についても会社の制度を頼らずに個人単位で交渉し、必要なものを“取ってくる”という感覚だ。上司の方も、日頃の部下の仕事ぶりに応じて、こうした交渉に柔軟に応じる。

自分のワークスタイルをプレゼンで勝ち取る米国

 ミシガン大学のワークライフリソースセンター(ワークライフに関するセミナーやカウンセリングを行う。育児、介護に関する資料を集めた図書館もある)は、短時間勤務や在宅勤務の事例を紹介している。この中に“Sample FlexProposals”という文書がある。短時間勤務を希望する人のための申請書見本だ。自分の仕事をすべて書き出し、勤務時間短縮の影響を予測、同僚にフォローを頼んだり、自宅のパソコンで作業することで、仕事に支障がないことを示している。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
この記事を…
内容は…
コメント4 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

治部 れんげ

1997年、一橋大学法学部を卒業し日経BP社に入社。「日経エンタテインメント!」「日経ビジネス」編集部を経て「日経ビジネスアソシエ」編集部所属。2006年7月より1年間、フルブライト奨学金を得て、米ミシガン大学 The Center for the Education of Women客員研究員として、「米国男性の家事育児参加と、それが妻のキャリアに与える影響」をテーマに調査や取材を行った。



このコラムについて

数字で見る男と女の働き方

 米ミシガン大学で、客員研究員として男女のキャリアについて調査をした筆者が、米国の研究やリポートなどの数値を基に、働く男女の現状や意識を再確認していく。 女性リーダーのための記事は「NBonline Women at Work」へ。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン