「攻めの経営支える戦略法務」

攻めの経営支える戦略法務

2007年5月17日(木)

もう生半可な説明は通用しない

シリーズ 株主総会対策 第1回

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 株主総会のシーズンが近づいてきました。今年の5月総会から、会社法の全面施行によって、総会のあり方は大きく変わります。最大のポイントは、会社が株主に提供する情報量が飛躍的に多くなるということです。

 会社は事業報告(旧営業報告書)や監査報告書、株主総会参考書類などに従来以上の情報を記載しなければなりません。例えば、監査報告書には内部統制システムに関する取締役会決議の内容についての「相当性」に関する記述が加わります。というのも、会社法施行規則では監査役に対して監査報告書に上記の相当性の判断を記述するように義務づけているからです。

「適法性」から「相当性」に

 従来なら監査役は基本的に取締役の職務執行の「適法性」だけをチェックしていれば済んだのですが、会社法の下では内部統制システムの構築・運用状況の相当性についても監査しなければなりません。ここで言う内部統制システムの構築・運用状況の相当性とは、分かりやすく言えば、経営陣が内部統制体制をきちんと作って適切に運用しているかどうか、その妥当性ということになります。

 では、監査役はそれをどう判断すればよいのでしょうか。これについては日本監査役協会が先頃示した内部統制システムに係る監査の実施基準が参考になります。会社法施行規則では、今後の総会に提出する監査報告書には、内部統制システムに関する取締役会決議の相当性についての監査結果を報告することになっています。

 日本監査役協会の前記実施基準によれば、監査役はその相当性を判断する際に当該取締役会決議が「適切に議論がなされたうえで」なされたかどうかをチェックするように求めています。つまり、決議内容に問題がなく、取締役会決議が適切に議論を経ていれば、監査役は「相当性がある」と判断できることにしているわけです。

「人格・識見が立派でございます」では通じない

 一方、新たな開示情報の代表例は、役員選任議案に関する情報です。従来なら取締役の氏名や生年月日、経歴、自社株式保有状況などといった内容を参考書類に形式的に列記して、株主総会で株主の質問があっても総会でそれに対して多少の補足説明をすれば済んでいましたが、今後はそういうわけにはいきません。

 例えば、取締役候補の再任を総会で諮るとします。当然、株主はその再任理由を知りたいと思うはずです。そうであるならば、従来のように参考書類の記載を形式的な内容にとどめるにしても、総会で株主から再任理由を問われた際に「人格・識見が立派でございます」などと抽象的な内容を答えるような実務の対応では済まないのです。

 実は、この考え方は数年前から判例で先取りされていたのです。「東京スタイル事件」の判決がそれです。この事件は、東京スタイル(8112)の総会で会社が提案した役員選任議案の決議の取り消しを求めて、当時大株主だった村上ファンドが提訴したものです。結局、裁判所は村上ファンドの請求を退けたわけですが、その判決の中で裁判所は取締役の説明義務について明示しています。

 すなわち、取締役の選任議案で取締役の適格性について質問があった場合には、候補者が再任候補であれば従来の職務執行状況などについて、きちんと説明するように求めているのです。従来なら総会で株主から役員選任議案に関する質問を受けた際には前述したように抽象的な回答をしていた会社もあるのですが、この事件で裁判所はそうした会社の対応を明確に否定しました。

 通常の株主が当然知りたいと思うような内容について取締役には説明する義務があり、取締役がその説明義務に違反した場合には決議取り消し事由になり得るのです。

株主が経営の事後チェックをする米国型総会に移行

 このように、今後の総会では株主への情報開示や取締役などの説明義務を巡って会社は適切な対応をしなければなりません。会社法の下では取締役会の権限が拡大して株主の事前チェックが働かない場面もあるため、なおさら会社には株主総会でもそうした対応が求められるのです。

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著者プロフィール

鳥飼重和(とりかい・しげかず)

鳥飼重和

1947年生まれ。70年中央大学法学部卒、75年税理士事務所入所、86年司法試験合格、87年早稲田司法試験セミナー専任講師、88年司法研修所入所、90年弁護士登録し鈴木秀雄(卓之輔)法律事務所入所、91年多賀健次郎法律事務所入所、94年鳥飼経営法律事務所開設、2000年鳥飼総合法律事務所に名称変更し、現在に至る。『平成19年新会社法対応株主総会徹底対策』(共著、商事法務)や『新版 非公開会社のための新会社法』(共著、商事法務)など著書多数


このコラムについて

攻めの経営支える戦略法務

世界的な規制緩和の進展で、企業を取り巻く競争環境は激変した。企業にとっては、もはや規制に従えば事業を確保できた時代は終わった。自らビジネス法務を駆使して、業容拡大のための事業モデルを構築できる企業だけが競争優位に立つ。そんな「攻めの経営戦略」に欠かせないビジネス法務を一線で活躍する法律専門家に、独自の視点で解説してもらいます。

 

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