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疑わしきは公表・回収、現場任せは危険

改正消安法施行に向けた企業の製品安全対策

2007年5月10日(木)

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 製品が原因で重大事故が起きた場合に製造会社や輸入会社に国への報告を義務づける改正消費生活用製品安全法(消安法)が5月14日に施行されます。

 これによって、企業は重大事故に関しては、その発生を知ってから10日以内に経済産業省に事故内容を報告しなければなりません。経産省は企業の報告を受けてから1週間以内に同省のウェブサイトなどで事故内容を公表し、被害が拡大しそうな場合には企業に製品回収命令を出します。

 もし企業が事故報告を怠れば、企業に対して「体制整備命令」を出します。それにも企業が違反した場合には、企業の代表者には1年以下の懲役、企業には100万円以下の罰金といったペナルティーが用意されています。

 改正消安法の対象となる製品は「一般消費者の日用品」ということですから、ガス機器や家電、家具、玩具などの幅広い分野に及びます。自動車や医療機器、食品など既に他の法律で規制されている製品は除きます。

 改正消安法では対象製品名は列記していません。列記していないのは、技術進歩や新製品開発など将来の環境変化に柔軟に対応するためです。なお、改正消安法では企業に報告義務のある重大事故として「死亡」「全治30日以上のけがや病気など」「一酸化炭素中毒」「火災」を挙げています。

 企業としては、改正消安法を順守するのは当然のこととして、その規定を超える高い倫理観に基づいた製品安全対策を早急に講じる必要があります。もしそうした対策を怠って製品による重大事故が起きれば、企業はPL(製造物責任)訴訟や株主代表訴訟などで甚大な損害を被る恐れがあります。経営陣には今回の法改正の経緯やその真の意義をよく理解する必要があります。

企業に求められる法律を超えた倫理観

 もともと消安法は製品事故から消費者の安全を守る目的で1974年に施行された法律です。これまでは企業の国への事故報告は任意とされてきましたが、今回の法改正でそれが義務化されました。その背景には、石油温風機やガス機器による一酸化炭素中毒、あるいはシュレッダーによる指切断事故などの重大事故が相次ぎ、それも企業が事故情報を把握しながら、関係当局への報告や消費者への公表や製品の回収をしなかったために、被害が拡大した例が起きたことが、今回の規制強化につながったのです。

 このような法改正は、企業にとっては実に残念なことだと言わざるを得ません。人の生命や健康に危害が及ぶ恐れのある事故について、報告、開示、回収などを行うことは、企業本来の最優先事項のはずだからです。

 こうした対応は法律以前の問題です。先ほど改正消安法の概要を説明しましたが、企業が肝に銘じておくことは、「この法律を守っているだけでは、消費者への責任を果たしたことにはならない」ということです。

 例えば、改正消安法では企業に報告義務のある重大事故の1つに「全治30日以上のけがや病気」を挙げています。では、「全治29日のけがや病気」なら国に事故を報告しなくても済むのでしょうか。もしこう考える企業があるとすれば、その企業は法律の目的を履き違えています。

 そもそも、なぜ国は企業に事故報告を義務づけたのでしょうか。行政が警鐘を鳴らすことで、被害の拡大を食い止め、「消費者の安心・安全」を守るためです。消費者の安心・安全を守るのは企業の使命であり、それは法律に規定されていようがいまいが、関係のないことです。けがや病気の全治期間が法律の規準に満たないからといって、国に事故を報告しなくてもよいということにはなりません。いみじくもドイツの公法学者のゲオルグ・イエリネックが述べたように、「法律は最低限の道徳」に過ぎないのです。

製品回収責任は「疫学的判断」で決まる

 しかし、こう言うと、反発する企業もあるかもしれません。「わざわざ法律に規定されていない製品事故を報告したり、製品の欠陥が明確でない段階で事故を公表したりすれば、製造物責任を問われかねない」と。しかし、企業の危機管理の観点からすれば、こうした考え方は明らかに間違っています。

 製品事故を隠しておいて、後に発覚した時、企業は致命的なダメージを受けます。最近の実例がそのことを示しています。また、製品回収の要否については「疫学的判断」で決まることが多くなっています。例えば、ある製品を使用した消費者の多数に健康被害が生じたとします。この場合、たとえ被害の原因が自然科学的に解明されなくても、製品を使用した消費者に健康被害が生じており、使用していない人には被害が生じていないという統計的な相関関係が明らかであれば、製造会社に回収責任が生じると考えられます。

 これが疫学的判断と呼ばれる考え方です。製造会社が、被害の原因が明確でないことを理由に事故公表や製品回収を怠たり、それによって被害が拡大した場合、被害者からPL訴訟を提起されれば、製造会社は敗訴する可能性が極めて高いのです。

 実際、1980年代後半~90年代前半に、こんな事件がありました。ある日本企業が米国で「L.トリプトファン」という健康食品を販売したところ、それを口にした消費者の多くが腹痛や血行障害を訴え、中には死亡する例もありました。当初その企業は「日本の法律に照らして製品に問題はないはず」と主張していましたが、米国当局の命令で製品販売停止に追い込まれたのです。

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