「攻めの経営支える戦略法務」

「開かれた総会」のために企業ができること

シリーズ株主総会対策 第4回

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2007年6月7日(木)

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 談合事件で独禁法違反(不当な取引制限)の罪に問われた大林組が、今年6月下旬に開催する株主総会に「法令遵守及び良識ある行動の実践に関する規定」を新設する定款変更案を提案しました。大林組が新たに作る定款の条項は、以下の内容です。

 「第3条 当会社においては、役職員一人一人が、法令を遵守するとともに、企業活動において高い倫理観を持って良識ある行動を実践する。特に建設工事の受注においては、刑法及び独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)に違反する行為など、入札の公正、公平を阻害する行為を一切行わない」

 この定款変更案は、私ども「株主オンブズマン」が株主提案しようと準備をしていた内容と、ほぼ同じものです。今年4月、株主名簿に記載された株主に手紙を送って賛同を呼びかけ、もう明日にも提案をするという段階で、「お話ししたい」と大林組の担当者が東京から来られました。

 「会社側の提案にすると確約する」と言うので、私どもの株主提案は取り下げたのです。その後枚方市の談合事件のため会長、社長が辞任する事態になっています。談合訣別宣言以前の事件とはいえ、自らこの事件を解明し、明らかにできなかったことからすると、談合体質から本当に脱却しているのか疑問が残りますし、株主総会で追及したいと思います。

 しかし、こんな文言を定款に書き込む企業は、恐らく初めてでしょう。大林組の取り組みを、それはそれとして高く評価しています。定款は、いわば会社の憲法です。会社のあり方を決める決まりに文言を入れるのは、それなりの決断をしたと思います。これは想像ですけども、どうやら株主である会社のトップの家にも手紙が届いたらしく、トップの決断としてやらなくてはいけないとお考えになったのではないでしょうか。

設立の目的は、総会で実質的な議論をするため

 1996年に設立された株主オンブズマンは、弁護士や公認会計士、学者など専門家と、市民株主が連携して設立された市民団体です。企業の違法行為を是正して、健全な企業活動を推奨するというのが目的です。

 私どもは、93年のゼネコン汚職で闇献金に揺れた旧ハザマの元会長らを相手取り、東京地裁に贈賄額を損害として会社に賠償するよう求めた株主代表訴訟を起こしました。元会長らは8900万円を払い、この時ハザマから払われた300万円の弁護士報酬を元手に、株主オンブズマンが設立されました。

 かつて株主総会といえば、外部の総会屋と内部の社員株主との間で行われるシャンシャン総会と呼ばれていました。それをやめさせて、実質的な議論ができる株主総会にするにはどうしたらいいかと取り組んできました。

 市民団体が、株主代表訴訟や株主提案をするというのは、あまりなじみがないかもしれません。しかし株主代表訴訟は企業の違法行為を是正する大きな力ですし、株主提案権によっても市民の声を反映できます。

株主提案は増配だけではない

 株主提案というと、増配など株主還元策を求めるというようなことばかりが注目されています。ですが、そのためだけのものではありません。米国では、一般市民や環境保護団体、キリスト教など宗教団体が、企業に対して環境問題や女性・障害者の雇用問題、労働・健康問題について、活発に株主提案をしています。米国と同じく、企業経営の監視に市民である株主が参画するという視点も必要でしょう。

 日本の新会社法では、株主提案するには、株主総会が目的とする事項に限られます。従って、定款変更等、提案内容は限られています。もっと広く総会の目的を認めてもよいのではないでしょうか。米国では、市民である株主が意見を表明する、いわば宣言的な株主提案も認められています。企業が株主提案を経営方針に取り入れて、宣言として決議する動きもあります。

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著者プロフィール

松丸 正(まつまる ただし)

松丸 正 弁護士、堺法律事務所
1946年東京生まれ。69年東京大学経済学部卒業。73年に弁護士登録。88年に無料の電話相談「過労死110番」を始め、全国に広まった。96年に、株主の立場から企業の違法行為を是正して健全な企業活動を推奨する「株主オンブズマン」の設立に参画。2002年には私立大学の入学辞退者に対する入学金や授業料の返還問題を巡る集団訴訟で、原告弁護団長を務めた。最高裁判所は2006年、入学辞退した受験生がいったん納めた授業料などの返還を原則として認める判決を下した。



このコラムについて

攻めの経営支える戦略法務

世界的な規制緩和の進展で、企業を取り巻く競争環境は激変した。企業にとっては、もはや規制に従えば事業を確保できた時代は終わった。自らビジネス法務を駆使して、業容拡大のための事業モデルを構築できる企業だけが競争優位に立つ。そんな「攻めの経営戦略」に欠かせないビジネス法務を一線で活躍する法律専門家に、独自の視点で解説してもらいます。

 

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