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第1回:「もったいない」企業を、M&Aで救おう

  • 西村 裕二

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2007年6月28日(木)

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 私の所属するアクセンチュアにはM&A(企業の合併・買収)専門チームが30人程度いて、クライアントのM&A戦略から統合作業までを支援している。今、M&Aに携わっている方は皆そうであろうが、全員がフル稼働で寝る間も惜しい。クライアントからせっかくいただいた仕事の依頼をお断りせざるを得ない状況だ。M&Aの案件が急増しているのを肌で感じる。また、依頼者も変化があり、これまでは事業会社が多かったが、最近は「M&Aのプロ」である投資銀行やファンドの方が急増している。

M&Aは進化し、今後も急成長を続ける

 統計的に見てみると、M&A市場は件数、1件あたりの買収金額ともに伸びている。件数ベースでは米国の約1万件に対し日本も約3000件にまで増え、10年前と比較すると約5倍になった。買収金額を見ると、日本では依然10億以下の小型案件が5割強を占めるが、1件あたりの買収金額は順調に拡大し、我々の仕事の対象となる数百億円以上の案件も順調に増加している。この傾向は世界的にも同じであり、今後も件数、買収金額ともに順調に拡大するだろう。

 特記すべきは、2006年に入り大型案件が急増していることだろう。日本たばこ産業(JT)が日本の歴代最高金額である2兆2500億円で英大手たばこメーカーのガラハーを買収し、ソフトバンクが1兆9200億円で英ボーダフォン日本法人を買収し、日本板硝子が英ピルキントンを6200億円で買収。JTの時価総額が2006年12月時点で5兆2000億円であるから自社の時価総額の約4割、日本板硝子が3000億円弱であるから2倍以上の買い物をしたことになる。

 しかし、こうしたM&Aにより、確実に利益を上げているのはどこか? 

現在のM&Aはマネーゲームとパワーゲーム

 答えは金融機関やファイナンシャルアドバイザーのみ、だ。これらの取引によって巨額の利益を手にし、投資銀行は過去最高益を更新し、投資家には高いリターンを配当し、従業員には巨額のボーナスをはずんでいる。しかし、これらは1年から3年で売りさばく「転売」による儲けであり、「マネーゲーム」的な色彩が強い。ある投資銀行の幹部の方によれば、「最近の新入社員は目に“¥マーク”をつけたような金の亡者が増えてきた」らしい。

 我々の仕事は買収の契約が完了した後の統合作業から入るタイプのコンサルティングも多い。統合が全く計画通り進まないため、「助けてくれ」という要請を受ける。確かに、統合作業には法務、財務・経理、人事、情報システムなどの深い専門知識が必要とされる。

 しかし、統合が進まない根本原因は買う側、買われる側の政治闘争などの「パワーゲーム」である場合が多い。このような無駄な争いがなければ我々の作業も大幅に軽減されるし、統合費用も少なくなるのに「人の性」とはいえ、残念に思う。

優良企業はこっそりM&Aを進めている

 M&Aのマネーゲーム、パワーゲーム的色合いは大型案件ほど明確に表れる。そしてニュースや新聞で取り扱われる買収は規模の大きいものが多い。このことから、M&Aは半ば「ゲーム」であって、「経営」ではない、と思われている方も多い。

 しかし、常に成長を続ける優良企業はほぼ例外なくコンスタントにM&Aを実施している。誰もが知る優良企業であっても、純粋に自前のリソースだけでは年数%の成長さえも継続は難しい。株式市場が彼らに一般的に期待する2ケタ成長を維持するためにはM&Aは必須だ。

 優良企業は小さな買収を数多く行っているため、一般的にはあまり騒がれることはない。このため、M&Aがいかに重要かつ有効なツールであるのかは、まだあまり知られていない。M&Aは確かに複雑に見えるが、経験を積めば必ず成功するし、企業成長のための必須ツールでもある。

勝者の条件は「企業価値を上げる能力」

 これまでマスコミに騒がれてきたM&Aは、本質的な価値向上を伴わない「転売型M&A」が多かった。多くの場合、投資家は1年から3年で売り抜ける。いくつかのIT(情報技術)ベンチャー企業や投資家は豊富な資金にものを言わせて、割安に放置されている企業に対し、強引に買収をしかけた。

 転売型M&Aは被買収企業が蓄えてきたキャッシュ、土地などの資産を切り売りし、人員削減や工場閉鎖で事業の「お化粧直し」をし、短期で転売して儲ける。ここには新しい発想はほとんどなく、前の経営者が人道的になかなか工場の閉鎖や人員を削減することができないところを、冷徹に実施しただけである。この冷徹さの結果、投資家やM&Aの仲介業者は短期間で巨額の利益を得た。

 しかし、もはや転売型M&Aは限界にきている。市場から転売できる案件が極端に減ってきているためだ。私のところもよくいろいろなファンドの方から「お金はあるのだけど、有望な投資先を教えてくれないか?」という問い合わせを受ける。

 なぜ転売できる案件が減ったかというと、1つは日本企業の好業績を背景に「売り物」の絶対数が減った。日本の経営者は少しでも儲かっていれば事業を売らない傾向が強い。2つめは転売型M&Aは特別な才能や経験を必要とせず参入が容易なので参入者が激増した。転売型M&Aを行うには、資金が調達でき、ある程度財務分析やデューデリジェンスができればそれ程難しいことではない。

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