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第2回:成功のコツは「小さな買収をコツコツと」

  • 西村 裕二

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2007年7月12日(木)

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 前回は、優良企業が成長のために日常的にM&A(企業の合併・買収)を活用していること。持続的に成長するためには、M&Aを設備投資などと同様に戦略の選択肢の1つとして、フル活用すべきだというお話をした。

 とはいえ、私が経営者の方とM&Aの話をすると、まだ買収の経験のない経営者は「マネーゲームに染まりたくない」「M&Aは難しそうだし、面倒くさそう」という反応が返ってくる。買収経験のある方でも、「こんな大変な苦労は二度とやりたくない」という答えをよく聞く。M&Aは有効な手段であることは認めるが、「自分でやるのはどうも…」ということのようだ。

 M&Aは難しいか? リスクは高いか? と質問されれば「Yes」と答えるしかない。しかし、難しさやリスクは極小化することができる。そのためには、キラッと光る技術や流通チャネルなどの資産を持つ規模の小さな企業を発掘し、いくつかの小さな買収を繰り返し、買収の経験を蓄積すること。いわば実地のトレーニング、これにつきると思う。

 私の勤めるアクセンチュアでは顧客企業のM&A支援だけでなく、自社でも積極的に数多くの買収を行っている。アクセンチュアは2007年4月末時点で時価総額が2兆7000億円程度あるが、案件のほとんどは20億~30億円程度の未上場企業であり、最大規模でも200億円には及ばない。これは、小さな買収でリスクを低減したいという思いと、小さな企業の専門能力や資産を我々の15万人の社員からなるグローバルネットワークで活用して大きなシナジーを得ることを狙っているからである。

繰り返しているうちに圧倒的に楽になる

 M&Aの「食わず嫌い」は成長機会を逸するということでもったいない。また、1~2度壮絶な苦労をしたのに、その苦労が次に使われないのももったいない。確かに、毎回、個々の買収案件ごとに新しいハードルにぶつかるが、圧倒的に楽になる。今回は、なるべく苦労やリスクを最小化できるように、成功のコツを明確にしたいと思う。

 M&Aを最も得意とする企業の1社である日本電産のケースを例に成功のコツを説明したい。M&A成功のためのエッセンスはここにすべて含まれている。

 日本電産はご存じのようにブラシレスDCモーターの企業であり、小型精密モーターを得意とする。1973年に創業以来、現在までに25社を次々と買収し、2006年度は売り上げ6300億円、経常利益640億円の企業である。2010年には売り上げ1兆円を目指し、2030年には売り上げ10兆円を目指す。2010年までに2006年までに買収した既存グループ企業で9300億円を売り上げ、残り700億円をM&Aによって獲得する予定だ。

 成功のポイントを私なりに抽出すると以下の7つになる。

1.能動的に候補企業を選べ

 買い手企業が買収候補企業を能動的に選ぶことは一見、当たり前のように聞こえるかもしれない。しかし、こんな当たり前のことが行われていない不思議がM&Aには多く存在する。一般的な候補企業選びは受け身的であり、M&Aを仲介するアドバイザーからの紹介で検討がスタートする。特に、現在のような「売り手市場」の時はなおさらだ。

 ハイテクメーカーの経営者から聞いたところ、アドバイザーは「退任間際の経営者」や「成長に行き詰まりを感じている企業」を狙っているらしい。退任の1~2年前の最後に花道を飾りたい経営者に擦り寄るそうだ。日本電産の永守重信社長は拡大したい事業領域を「中・大型モーター」「制御回路・ソフト会社」「半導体」の3つに特定し、自らの成長戦略を実現するために必要な要素技術を持つ企業を、四季報を肌身離さず持ち歩き自分で候補企業としてリストアップしている。

2.社長自らが全責任を持つ

 一般的に日本の社長は実行力がない。企業を買ったら終わりか、統合計画を立てるまではやるが、統合の実行責任を持たない。永守社長は経営戦略の最重要課題と認識し、候補者探しから統合まで一気通貫で見る。永守社長は自分で候補企業リストを作成し、候補企業の経営状況が悪い場合に自分で買収先に行き、契約をまとめる。先方の経営陣や社員の納得が得られるまでじっくり待ち、感情を無視した買収はしない信念をお持ちである。買収後は週何日か買収した企業に直接出向き経営を指導する。一般的なケースでは、社長は売買契約が成立するまでは精力的に行われる方が多いが、統合後は丸投げの場合が多い。

3.あせらず「逆張り」発想で買う

 一般的に人は売り物が少なくなると不安になり買い焦る。今はまさに、2007年5月からの三角合併解禁を機にした買い焦りのムードにある。しかし、三角合併解禁は、以下の理由でそれ程M&Aが急増するという影響はないと思う。

 1つは世界中が金余りで、お金が買収のボトルネックになっているケースが少ない(三角合併を使う理由がない)。2つめは弊社がエコノミストと共同で調査した結果を見れば、日本企業は他国の企業からそれ程魅力的に見えていない。グローバル企業はアジアでの投資といえばインド、中国を最優先としており、日本の優先順位は低い。そんなに焦らなくてもいいと思う。

 一方、日本電産はこれまで、日本で積極的に買収を成功させてきているが、「不況こそ成長のチャンス」という逆張り発想で、企業を安値で買ったことが成功の一因である。

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