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第3回:M&Aは「人」次第。ラテンな気質が成功のカギ

  • 西村 裕二

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2007年7月26日(木)

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前回は日本電産の例を取り、M&A(企業の合併・買収)の成功のコツについてお話をした。今回は「M&Aの成否は人で決まる」という話をしたい。

 私が経営コンサルタントとして駆け出しの頃、業績のいい会社というのは一流大学の卒業生がたくさんいる会社だと思っていた。しかし、多くの企業と接してみると、会社の成長や業績は従業員の学歴とはあまり相関がないことが分かった。

 というのは、経営幹部に高卒や有名大学出身でない方がいらっしゃる企業で、急速な成長を実現している企業に数多く出合ったからだ。一方、高学歴の方が多くいる企業では、部下や時には上司のアイデアを論理的に冷たく否定する批評家タイプの人が多い。このような批評家が、若手の創造力や成長へのエネルギーを削いでいるのだ。

 今では、私は経営の良し悪しを見る時、社員の方が、情熱を持ち、仲良く、楽しそうに仕事をしているかどうかを見る。そのような企業で業績の悪い会社は見たことがない。反対に、業績の悪い会社は例外なく上下、部署間の仲が悪い。例えば、経営幹部やキーマンが、他部門の悪口や上司批判などをぶちまけている人が多い企業がある。こういう会社は業績が悪いか、1~2年後に悪化する企業である。

 まさしく、経営の成否は「人」で決まると思う。同様にM&Aの成否も「人」で決まる。いやM&Aの成否は、より「人」の影響が大きい。

M&Aの「成功率」は3割以下

 アクセンチュアを含むいくつかのM&A関連企業の調査から、M&Aの投資に見合う成果の創出に「成功」した企業は3割に満たないことが分かっている。成功率の低い要因として、M&A自体が関係者間の「利益相反」を引き起こしやすいことが挙げられる。M&Aは、投資家、買い手企業、売り手企業がそれぞれ、自らの利益を最大化しようとするからだ。

 M&Aの「利益相反」は関係者それぞれの立場があり、避けられないものである。だからといって各々が自分の欲望を主張し、対立しては悪い結果しか待っていない。皆がお互いを信頼し合い、創造的に考えれば、必ず皆が満足する解を考えつく。そのためには、M&Aの関係者がお互いの立場を理解する必要がある。

 M&Aの関係者は、買い手企業、証券会社や投資銀行などのアドバイザー、投資家、売り手企業の4者がいる。以下、それぞれの立場を説明しよう。買い手企業にとってどういうリスクが起こり得るかを明らかにするために、性悪説に立って説明している。このようなことがすべての人に当てはまるわけではないことを念のため、付け加えておく。

●M&Aアドバイザー

 M&Aアドバイザーは顧客企業に案件の売買を持ちかけ、企業売買契約の成立までの仲介業務を主な役割としている。その成果に対して彼らは売買高の一定の割合を手数料として受け取る。彼らは買い手企業がより高額の大型案件を、より高く買ってくれれば儲かる。

 従って、本当に買い手にとって最良のものを勧めている保証もないし、買い手のために、できるだけ安い価格で契約を成立させるインセンティブもない。アドバイザーの中には成長が行き詰まっている企業や退任間際の経営者がいる企業をターゲットにし、「買わないならライバルが買いますよ」という殺し文句で買い手をその気にさせる人もいる。悪徳不動産仲介業者が不良建築を高値で売りつけるようなものだ。だから「本当に自分たちにとって必要なものを勧めているのか?」「本当に適正な価格で勧めているのか?」ということを、買い手自身が専門家から意見を聞き検証する必要がある。

●金融投資家

 投資家は投資した企業の事業や資産を解体・売却したり、収益性を向上させ企業価値を高め、株式を第三者に売却して収入を得る。買い手企業とその買収時に投資した金融投資家との関係について考えると、一見、購入企業の「企業価値の最大化」に向けてベクトルは一致しているように見える。

 しかし、「時間」と「確実性」に対する期待が異なる。事業会社は一般的に中長期的にリターンを考え、不確実性に対する忍耐力がある。例えば、事業会社は最低3年見ないと大きな変革が実現できないことを知っているし、研究開発を伴うと応用技術で最低3~5年、基礎技術で最低10年のスパンで考える必要が出てくる。

 金融業界の投資家は1~3年でリターンを最大化したいし、不確実性を嫌う。「なんだ、それだけの違いか」と思われるかもしれないが、この対立は実はかなり深刻な問題を引き起こす。以下に、経営危機に直面したある製造業に多額の資金を投資した金融投資家のケースで、どのような対立が起こったかの具体例を説明したい。

ある製造業のケース

 この製造業は高い技術力を生かして、高品質の製品を世に出して業界のリーディングカンパニーの一角を占めていた。オーナーが築いた米国、中国、インドとの強い関係を生かし、海外展開も順調に進んでいた。

 しかし、突然の業界の価格競争激化により、経営の危機に直面した。その結果、金融機関からの投資の支援を仰いだ。経営悪化の原因は事業の範囲を広げすぎたことと経営管理、特にコストや利益管理が甘いことである。ただし、不況の間にも多額の資金を投入し続けた研究開発力、製品品質の高さ、グローバルネットワーク力を生かせば今後の経営再建は有望に思われた。

 経営陣の「再建」に対する方針は次のようなものだった。

 今回の経営悪化の原因は経営管理の甘さであるので、管理の厳格化とコア事業とノンコア事業に分け、事業領域をより収益性が高く成長も見込める領域へ資源をシフトしていく。経営者はとても「親分肌」の方で、今まで築いた事業、共に働いてきた人々を自社で守りたいという欲求がある。しかし、改革の中には、稼働率の低い工場の閉鎖、数が膨らみすぎた関連会社の整理統合、本社人員や間接人員、および調達コストの大幅削減など厳しいものも含まれていた。経営陣の再建プランでいけば3年で業界の収益性でトップレベルに並ぶというものであった。客観的に見ても、これは適切な再建プランに思える。

 一方、投資家の目から見ても、経営者の再建プラン通りにいけば十分満足できるリターンを得られる。しかし、再建プラン実現までに時間もかかるし、100%成功する保証はない。一方、ノンコア事業とされた事業も競合他社から見れば魅力的な事業であり、買収希望者も多い。投資家としては、確実に利益の得られる事業売却を大胆に行いたい。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長