前回は、米国ビジネスパーソンの長時間労働の実態を紹介した。今回はその理由について考えたい。紹介するのは“遅れた企業”ではなく、“ワークライフバランス先進企業”でさえ、今なお抱える課題である。
1つ目の課題は、制度と実態の乖離だ。「これまでのキャリアで、パートタイム勤務をしようと思ったことはありますか」と、ある大企業の女性役員に尋ねてみた。
筆者はかつて、同社で働くパートタイム管理職にも取材したことがある。当時、労働時間が短くても昇進できるとは初耳だった。これが可能なら、ワーキングマザーや家庭責任を果たしたい男性たちは、希望が持てると思ったのだが…。
ところが冒頭の質問に対し、女性役員の答えは「ノー」。理由は、制度と実態に乖離があるためだ。この企業でフルタイムの場合、制度上は週40時間労働だが、実際は60時間働く。パートタイムの場合、制度上は週32時間で実際は40時間の労働。パートを選べば、「キャリアアップを求めていない」と評価されてしまう。役員を目指す女性にとっては、パートタイムの選択はリスクが大きい。
制度の利用を邪魔する上司
「制度だけはまあ、整っているけれど。そんなにいい環境じゃないですね」。ある女医はこう言う。彼女は正式には週30時間半のパートタイムだが、実際の勤務時間はフルタイムを上回る。患者のカルテ整理などのペーパーワークを、勤務時間外に週6〜7時間やらねばならない。夕方以降に仕事が入ると、保育園児の子供を迎えにいくのに差し支える。
彼女が働く病院は規模が大きく設備が整っており、専用の育児施設もある。制度だけを見ると先進的な雇用主に見えるが、実際はそうではないらしい。
問題は上司だ。制度上は認められているのに、パートタイム勤務の利用を申請すると、露骨に嫌な顔をするという。
そんな環境で、仕事と家事の両立に力を貸してくれるのは同僚だという。感じの悪い上司には期待せず、パート勤務の女医同士で互いにサポートし合い、仕事に支障が出ないようにしている。
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