• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

第5話 「今度倒れたら、最後かもしれませんよ」

2007年8月8日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

第1章 5. 伊豆の山荘

 「達也はどうしているかな」
 慣れない左手で湯飲みを持ちながら、宇佐見秀夫は妻の早苗に聞いた。

 「さあどうでしょう。こちらからは連絡してませんから…」
 「待つしかないか」
 窓越しに大室山を見ながら、秀夫はため息をついた。

図版

 半年前の朝のことだった。宇佐見秀夫はいつものように目を覚まし、ベッドから起き上がろうとすると、右足がグニャっと曲がり、そのまま床に崩れ落ちた。しびれのために、足に力が入らない。あわてて早苗を呼ぼうとしたのだが、ろれつが回らない。

 嫌な予感が宇佐見を襲った。倒れた時の音で異常を察した早苗は、朝食の支度を止めて寝室のドアを開けた。彼女が見たのは、床にうずくまっている亭主だった。宇佐見は救急車でそのまま病院に運ばれた。

 脳梗塞だった。

 幸い命は取り留めたものの、右手と右足にマヒが残った。それから1カ月後、宇佐見はマヒを残したまま退院した。

 「生活を変えなくてはいけませんな」
 主治医は宇佐見に現役引退を勧めた。もう30年以上も大学教授、コンサルタントの仕事、講演などで多忙な日々を送り、暇ができれば旅行や食べ歩きに出かけ、そして、酒を飲んだ。

 「今度倒れたら、最後かもしれませんよ」
 確かに、その通りかもしれない、と宇佐見は思った。
 「潮時だろうな…」
 早苗とともに、伊豆高原の別荘に移り住むことを決めた。この地の弱食塩泉は疲れた体を癒やしてくれるに違いない。澄み切った空気と風光明媚な景色は、リハビリにはもってこいだ。

 不自由な右手を見ながら、これからの仕事をどうしようか、と逡巡した。少しでも仕事は続けていきたい、との思いはあった。

 だが、考えもしなかったことが起きた。すべての顧問先に体良く断られたのだ。

 「先生。療養に専念してください」
 「健康が快復されましたら、その時にまたお願いします」

 つい先日も、ジェピーから顧問契約は延長しない旨の書留郵便が届いた。まだ口にマヒが残っているせいで上手に話せなかったが、それでもジェピーに電話を入れた。達也が気になっていたのだ。

「「熱血!会計物語 ~経理課長、団達也が行く」」のバックナンバー

一覧

「第5話 「今度倒れたら、最後かもしれませんよ」」の著者

林 總

林 總(はやし・あつむ)

公認会計士

外資系会計事務所、監査法人勤務を経て開業。国内外でビジネスコンサル、管理会計システム導入コンサルのほか、大学で実践管理会計の講義を行っている。また管理会計の草の根活動として、団達也会を主宰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

「昔、SOMPOは保険会社だったらしい」と言われたい。

桜田 謙悟 SOMPOホールディングス グループCEO社長