10月26日開催のセミナー「『ワークライフバランス』シンポジウム 男の働き方を変えよう!」では男性パネリストが4人登壇するが、その1人が楽天クロスメディア事業ユニットリーダーの安藤哲也さんだ。
安藤さんは、小学4年と1年の子供の父親として学校ではPTA会長も務める。また2006年には、父親の育児と自立支援のためのNPO法人(特定非営利活動法人)、ファザーリング・ジャパンを代表として立ち上げた。

楽天クロスメディア事業ユニットリーダーの安藤哲也さん(写真:山田 愼二、以下同)
安藤さんは、いつ頃から「父親力」に目覚めたのだろうか。「12年前に長女が生まれた時書店で働いていたのですが、ちょうど新店舗出店の企画を任されたところでした。共働きだったので、自宅と保育園と職場のどこへも自転車で15分で行ける場所に、新店舗を出すことに決めました」
安藤さん自身、子供を背負ってレジに立ち、バックヤードでオムツ替え。7時半に仕事から帰ってくる妻とバトンタッチし、10時まで勤務。現在40代半ばという安藤さんの世代で、ここまで子育てに関わる父親は、当時は珍しかっただろう。
まだワークライフバランスという言葉すらなかった時代。子育てに参加といっても、同世代のパパは、休日に目いっぱい子供につき合うくらい。だいたい、母親が専業主婦という家庭で育った男性は、子育てをやりたい気持ちがあっても、スキルと体がついていかないだろう。
安藤さんも最初は、何でもこなすスーパーパパではなかったようだ。「男は、徐々に父親になっていくんです。オムツ替えが苦手な父親は多い。実を言うと僕も、最初は子供のウンチが苦手だった。でもある日、『この状況を楽しむにはどうすればいいか』と考えたんです。そして、ウンチを2分ぐらいマジマジと見てみた。すると『ウンチは情報なんだ』と分かったんです」
ウンチの色や形、量で「ああ、今日も子供は健康だ」と分かる。ウンチがゆるければ、心配になる…。子供のウンチが、子供の健康状態を知るための「情報」だと気づいたとたん、オムツ替えも楽しくなり、夫婦の会話もはずむようになった。
「母親の育児に協力するというのではなく、男も子育てを楽しみたい。そもそも、自分の家庭や自分の子供のことなのに、『家族サービス』『育児協力』というのは、おかしいでしょう。育児は、主体的にやらないと楽しくないんです。子育てという楽しみを満喫したかったら、子供ができた時点で自分の中の“OS”を入れ替えよう、といつも言っています。古いOSのままだと、フリーズしてしまう。ことによると、離婚という強制終了が起こってしまうかもしれない」
しかしそうは言っても、男性の子育てには課題は多い。男性も育児休業を取れる制度があっても、それを利用する風土がない企業も多い。男性が子育てに参加しようとすると、「仕事をあきらめた」と見られてしまうのが男社会だ。安藤さんも、同世代や上の男性たちからの、無言の批判に出合わなかったのだろうか?
「組織の中で働いていれば、どこでも軋轢はあります。今の職場なんて、結婚している人すら少ない。でも僕は、『朝の会議には出ない』『早く退社する』と申請して、許可をもらっています。こういう働き方に関して、子供のいない男性は批判的ですが、子供のいる男性は『よくやってくれた』と言います。一方、女性は『安藤さんだから、(そういう働き方は)当然』という目で見てくれる。僕はこれまで何度か転職していますが、新しいオフィスに来た最初の日に、まずデスクに家族の写真を飾ります。『子育てする父親』というキャラクターを立てることが、大切ですね」
若い世代は安藤さんのような父親像に憧れるが、同世代からは理解を得られにくい。安藤さん自身も、母は専業主婦だったというが、どうして他の男性と異なる価値観を持つようになったのだろうか。
「僕にとって、父親が反面教師でした。公務員で毎日5時半には帰宅するのに、家では何もしない。それに、母親に対して高圧的な態度を取るのが一番いやでした。僕が小学5年生の時にビートルズやジョンとヨーコを知って、なぜ僕のうちには『ラブ&ピース』がないのか、と愕然としました。その頃から、自分が結婚したらいつも笑いの絶えないような家庭にしたい、妻のやりたいことや人生を応援したい、と思うようになったのです」
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。




からのご案内




