「入門! 社会心理学」

なぜ人は思い通りに動かないのか(第2回)

会議がつまらない――集団浅慮の落とし穴

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2007年10月23日(火)

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■シリーズ記事
第1回「相手を説得できない――交渉下手は日本人の遺伝子?
第3回「他人に合わせてしまう――自己と集団の間にある葛藤

 「3人寄れば文殊の知恵」ということわざがあります。1人で考えるよりも、何人もの人々が寄り集まれば、何倍もの知恵が出てくるというものです。果たして本当なのでしょうか。

 もし本当ならば、大勢が集まる会議で意見を出し合えば、素晴らしいアイデアが出てくるはずです。しかし、実際にはそうではありません。会議は時間がかかるばかりで、その場で目覚ましいアイデアが出てくるようなことはあまりありません。1日に何度も会議に出席するような方々は、会議の結果が必ずしも望ましいものばかりではないことが骨身に染みていることでしょう。

「集団思考」「集団浅慮」が意思決定を誤らせる

 社会心理学で「集団思考」あるいは「集団浅慮」と呼ばれている現象があります。集団で意志決定をする場合に、集団であるからこそ最適な決定ができなかったり、間違いを犯したりすることに着目した概念です。

 やや専門的になりますが、米国の社会心理学者ジェニスは集団思考を次のように説明しています。

「集団思考とは、凝集性の高い(まとまりが強い)内集団で、意見の一致を重視するあまり、取り得る可能性があるすべての行動の現実的な評価を無視する思考様式である」

 有名な例は、1961年の米国ケネディ政権によるキューバ・ピッグス湾侵攻に関する決定プロセスです。

 また、日常の会議でも起こりがちな集団思考の前提条件は次のようなものです。

(1)高度に凝集性の高い意志決定者群である

(2)外部の影響から集団が隔離されている

(3)指導的なリーダーがいる

(4)取り得るすべての行動を注意深く考慮する確認手続きがない

(5)リーダーが考えるよりも良い解決方法が見つからない場合に、外部の脅威から強いストレスが加わり続ける

 一見するとメンバーの士気が高く、指導的なリーダーの下でよくまとまっている、理想的とも思えるような意思決定集団です。

極端な方向に振れ、異論を言えない雰囲気に

 ところが、こうした状態では「集団極性化」(後述)が進行し、ある極端な方向に意見がまとまりがちになってしまいます。考えられる可能性を注意深く比較検討しなければならないはずの会議で、ある特定の意見が支持を集め、疑問を感じつつも異論を述べることができないような雰囲気を経験されたことが、どなたにでも1回はあるでしょう。それが「集団思考」なのです。

 ここで、「集団極性化」というのは、集団討議の後で集団全体の立場がより極端な方向へ変化する現象のことを言います。より安全な方向へ変化することを「コーシャスシフト(Cautious Shift)」と言い、より危険な方向へ変化することを「リスキーシフト(Risky Shift)」と言います。この集団極性化がさらに進行すると、比較的有能な教養ある人たちでも、何かを決める時に決定の質が落ち、とんでもない誤ちを犯すことがあるのです。

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著者プロフィール

榊 博文 (さかき・ひろぶみ)

慶応義塾大学教授

1969年慶応義塾大学経済学部卒業。75年同大学院社会学研究科博士課程修了。現在、同大学教授。社会学博士。専門は態度変容、影響力の研究。『説得と影響―交渉のための社会心理学』(ブレーン出版)、「トップ営業が使う説得学」(ダイヤモンド社)など、著書、論文多数。



このコラムについて

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 なぜ人は思い通りに動かないのか――。職場、家庭、学校、それから政治経済の現場でも、誰もがいつも悩んでいる問題に、社会心理学の切り口で光を当てていきます。

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