■シリーズ記事
第1回「相手を説得できない――交渉下手は日本人の遺伝子?」
第2回「会議がつまらない――集団浅慮の落とし穴」
第3回「他人に合わせてしまう――自己と集団の間にある葛藤」
(このシリーズは今回が最終回です)
相手の心理を読んで行動したつもりが、逆に、反感を買ってしまうようなことはよくあるものです。例えば、テレビで最近流行の“山場CM”を取り上げてみましょう。
消費者に購買意欲を起こさせるために、毎日多くの“広告”が露出しています。広告には商品情報の視聴者への提供、購買促進、娯楽、教育など多くの機能が含まれています。広告が視聴者の態度に与える影響は、広告の送り手にとって重大です。特に、テレビCMの影響力はほかのメディアの比ではないと言っていいでしょう。
ところが10年ほど前から、テレビCMの持つマイナスの側面や効果がしばしば指摘されるようになってきたのです。
山場の直前にコマーシャル──効果的どころか反感を買う
従来、CM露出に際する主要な問題は、「番組枠かスポット枠か」「曜日」「時間帯」「番組内容と広告商品との適合性」「15秒CMか30秒CMか」といったことでした。ところが、最近、「番組内CMのタイミング」が問題視されています。
最近のテレビをご覧になればお分かりのように、ドキュメンタリー、バラエティー、クイズ番組、ドラマなど多くのテレビ番組で、「ここぞ」という山場になると、いったんCMが入ることが増えています。視聴者の気を引くことによって、CM明けまでテレビの前に釘づけにすれば、その間に流れるCMもよく観られるはずだ、というのが狙いです。
このような“山場CM”を見せられた視聴者は、「番組の次を観たい、知りたい」という欲求を掻き立てられるどころか、逆に、不快感や嫌悪感といった負の感情を抱いてしまうことが少なくないのです。
社会心理学の観点では、CMに対する「認知反応」が起こる前に「感情反応」が生じてしまい、CM内容を理解したり納得したりすることを阻害していると考えられます。感情反応が認知反応に歪みを与え、人の態度や行動に影響を与えることは既に知られている事実です。
そうなってしまうと、“山場CM”は「番組視聴率」と「商品の売り上げ」の双方にとって本当に効果的なのかという疑問が生まれます。CMを出すタイミングに対する不快感や嫌悪感が、CM内容への反感、ひいては商品やそれを販売する企業に対するネガティブなイメージにつながってしまうのです。また、長期的に見れば、テレビ嫌いの人を増やしてしまう恐れもあります。
“一段落CM”の好感度は“山場CM”の6.6倍
テレビ番組を観る人の中には「その番組が好きだから」という理由だけではなく、1日の疲れを癒やしたいとか、リラックスしたいという理由で観る人もいます。そのような人々にとって、テレビが新たなフラストレーションの原因になってしまう可能性があるのです。
実際、筆者らが2002年に行った「番組内CM提示タイミングが視聴者に与える影響に関する調査」では、山場CMを提示されると、視聴した多くの人々が極めて高い不快感を経験し、まずCMと番組に怒りの矛先を向けました。山場CMの商品に関しては「好感が持てない」「買いたくない」「覚えていない」という回答もあり、決して無視できません。
購買意欲に関して、番組の区切りのよいところで流す“一段落CM”の商品を買いたいと答えた人は、山場CMの商品を買いたいと答えた人の6.6倍にも達しました。記憶度に関しても、一段落CMの商品を覚えていると答えた人は山場CMの商品を覚えていると答えた人の2倍強です。つまり、購買意欲、記憶度のいずれを取っても、一段落CMの方が山場CMよりも効果的なのです。
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