「プロの消費者」としての東急ハンズの従業員の姿勢は、品揃えだけではなく、「接客」にも表れています。
小売業でありながら、「売らない」という選択をすることがあるのです。
例えば、お客様がしたいと思っていることが、リスクをともなうことであったり、十分な裏づけがないとできないことだったりした場合は、商品の購入を断念していただくよう説得します。
私が内装材の担当だったとき、そのリスクを説明するのに困った商品があります。窓ガラスに貼って、直射日光を避けたり、紫外線をカットしたりするためのフィルムです。
このフィルム、ブラウン系やブルー系(透明のものもあります)の大変薄いシートで、紫外線を90%以上カットしてくれる優れものです。しかし、中にワイヤーが入っているガラスには貼っていただけないのです。
窓ガラスには、割れた際に飛散するのを防ぐため、ワイヤーが入っているものが多く見られます。このタイプのガラスにフィルムを貼ると、ガラスにヒビが入る可能性があります。フィルムを貼ったガラスに直射日光があたると、何割かの光線がここで止められ、その光線によってガラスは熱を持ちます。
「絶対にダメ、というわけじゃないんでしょう?」
中に何もなければ問題ないのですが、ワイヤーがあるとそれも熱されます。やっかいなことに、ガラスと金属では耐熱強度が違いますから、ある一定温度を超えると、ワイヤーのみが膨張してしまい、ガラスがヒビ割れたり、場合によっては割れてしまったりするのです。
これは、商品説明としてメーカーもきちんと記載しているのですが、「いや、たぶん大丈夫だよ。買っていくよ」「絶対、割れるってわけじゃないんだろう」などと、私に同意をもとめるかたが、大変多くいらっしゃいました。困っているからこそご来店いただいているのですから、何とかならないかというお気持ちはよくわかります。ましてや理論上は割れる可能性があっても、必ず割れるというわけではないのです。
しかし、日光や熱という目に見えないもののことでもあり、どのくらい日光が当たるのか、ガラスの大きさ、厚み、などと条件は様々で、「お客様の場合は大丈夫だと思います」とは絶対に言えないのです。
わざわざご来店いただいたお客様に、購入をあきらめていただくのは、本当に心苦しいことです。しかし、商品のことを正確に理解していただいて、起きてしまうかもしれないことを防ぐのも従業員の義務であるはずです。
もっとも多いのが、壁に額などを掛けるためのフックをお求めのケースです。写真などを額に入れて飾りたい。その額を掛けるためのフックを買いたいがどれを買えばいいかという質問を、本当によく受けます。
この壁用フック、簡単なことのようで、実はやっかいなのです。壁の材質によって、使うべきフックの種類が違うのです。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。










