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第25話 「見るべきものはお金だよ」

2008年1月16日(水)

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◎前号までのあらすじ


達也は間中専務から転勤を命じられ、愛知工場の副工場長に就任した。出迎えてくれたのは、間中によって実権を奪われている工場長の三沢だ。三沢に工場を案内してもらうと、動かないロボットがずらりと並んでいる。また、倉庫には大量の在庫が山と積まれていた。
 さらに三沢は、「決算期末近くになると、この工場では普段では決してあり得ないことが起きる」と言う。それは棚卸しの1週間前から当日にかけて起きるというのだ。達也はそれを確認するため、在庫の実地棚卸しに立ち会うことにした。

不可解な動き

 その翌日から、工場長の予言した通り不可解なことが続いた。

 最初は製品在庫だった。倉庫に積まれていた製品が、次々と出荷されたのだ。製品を積み込んだトラックはどれもジェピーの社有車で、運転手も同じだった。つまり、同じトラックでピストン輸送をしているのだ。

 達也は運転手に仕向先を聞いたが、彼は答えようとしなかった。口止めされているのだ。
 達也は倉庫事務所に入ると出荷伝票をめくった。

 (これだ!)

 そこには「ワールドワイド電機(WWE)」と書かれていた。WWEといえば、日本屈指の家電メーカーだ。

 (押し込み販売…?)

 営業担当者が得意先に頼み込んで、むりやり製品を買ってもらうのだ。押し込み販売のやり方は、いく通りもある。翌月の注文分を前倒しで引き取ってもらう、返品を条件に製品を取りあえず数日間預かってもらう、などの方法だ。ほかにも、特別値引きを条件に大量に販売することもある。

 学生時代、達也は宇佐見教授に「なぜ押し込み販売がいけないのか」と尋ねたことがある。会計のテキストには「売り上げが実現していないから」と書かれていた。実現とは、製品を引き渡し、確定した対価を貨幣性資産で受け取ることと書かれている。平たく言えば、製品と売却代金との交換が成立することだ。だが、理屈で分かっていても、腑に落ちないのだ。

 (押し込み販売では、収益は実現したとは言えない…?)

 「まぼろしを追うから分からなくなる。見るべきものはお金だよ」
 宇佐見はそう答えただけだった。

 その時の達也には、禅問答のようで全く理解できなかった。しかし、今は違う。まず、返品を条件に製品を引き取ってもらうということは、得意先は最初から代金を支払うつもりはないのだ。次の翌月の注文分を先取りして製品を引き渡しても、現金の回収が1カ月早くなるわけではない。

「「熱血!会計物語 ~経理課長、団達也が行く」」のバックナンバー

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「第25話 「見るべきものはお金だよ」」の著者

林 總

林 總(はやし・あつむ)

公認会計士

外資系会計事務所、監査法人勤務を経て開業。国内外でビジネスコンサル、管理会計システム導入コンサルのほか、大学で実践管理会計の講義を行っている。また管理会計の草の根活動として、団達也会を主宰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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