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第28話 「そんな表面的なことなら素人でも指摘できますよ」

2008年2月6日(水)

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◎前号までのあらすじ

 達也は間中専務から転勤を命じられ、愛知工場の副工場長に就任した。出迎えてくれたのは、間中によって実権を奪われていた工場長の三沢だ。三沢に工場を案内してもらうと、動かないロボットがずらりと並んでいる。また、倉庫には大量の製品在庫が山と積まれていた。

 工場では棚卸しの数日前から、三沢の予言通り不可解な出来事が次々と起き始めた。達也はそこに粉飾の気配を感じた。棚卸し当日、公認会計士の西郷が立ち会いにやって来た。しかし、西郷が立ち会うはずの在庫数量カウントは、すでに1日前に終わってしまっていた。

 製造現場に所狭しと置かれた部品を見て、西郷は呆気にとられた。まさしく仕掛品のジャングルだ。こんなに大量の仕掛品をすべてカウントするには相当な時間がかかったはずだ。

 西郷は、材料倉庫と製品倉庫、そして工場の中をミズスマシのようにグルグルと何度も回った。歩きながら、タグの張り漏れがないか注意深く確かめた。それから、製造工程を初工程から順に追って、タグに記載された数量にカウントミスがないか自ら数えた。テストカウントだ。どの在庫もカウントミスはなかった。

 ただ1つ西郷は気にかかることがあった。タグに製造工程の記載がないことだ。

 例えば、倉庫から運び出されたばかりの仕掛品と、完成直前の仕掛品とでは、材料費は同じでも、加工費が全く違う。

 製品1個を完成させるのに100円の加工費がかかるとする。倉庫から運び出されたばかりの仕掛品には加工費はほとんどかからない。しかし、出荷検査直前の仕掛品の加工費は100円近くかかっているはずだ。つまり、作業の進捗の程度によって、仕掛品原価に占める加工費が異なってくるのだ。

 タグにはカウントされた仕掛品が、どのような進捗状況にあるのかといった情報は一切書かれていない。回収したタグは、東京の本社にある経理部に送られて金額に置き換えられる。タグに作業工程の情報が書かれていなければ、その仕掛品を金額に置き換えようにも、いくらにすべきか分からない。西郷は首を傾げた。

 「石川部長。仕掛品の金額はどうやって評価するのですか?」
 西郷が聞いた。

 「私は経理のことは分かりませんので」と言って、石川は携帯電話で木内を呼んだ。しばらくして、木内がやってきた。

 西郷は同じ質問をした。
 「材料費は一律で完成品の50%としています」
 木内は当然のような顔で答えた。

 「その根拠は」と言って、木内は説明を始めた。製造現場には仕掛品が遍在している。つまり、最初の工程から最終工程に至るまで、製造途中の在庫が分散している。これらの進捗度を1つずつ詳細に調べても、あるいは仕掛品在庫全体をまとめて進捗率50%としても、金額計算に大した誤差は出ないはずだ。

 「そんな理屈もあるんですね」と言って、西郷は苦笑いした。

 だが、木内の説明のどこが理論的に間違いなのか、すぐには説明できなかった。
 確かに、仕掛品が遍在しているのだから、ここの進捗状態を勘案して計算するのも、すべての仕掛品の進捗率をまとめて50%と見なすのも、大差ないようにも思える。

「「熱血!会計物語 ~経理課長、団達也が行く」」のバックナンバー

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「第28話 「そんな表面的なことなら素人でも指摘できますよ」」の著者

林 總

林 總(はやし・あつむ)

公認会計士

外資系会計事務所、監査法人勤務を経て開業。国内外でビジネスコンサル、管理会計システム導入コンサルのほか、大学で実践管理会計の講義を行っている。また管理会計の草の根活動として、団達也会を主宰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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