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第29話 「私は、会計監査上どうですか、と聞いているのです」

2008年2月13日(水)

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◎前号までのあらすじ


 達也は間中専務から転勤を命じられ、愛知工場の副工場長に就任した。出迎えてくれたのは、間中によって実権を奪われていた工場長の三沢だ。


 工場では棚卸しの数日前から、三沢の予言通り不可解な出来事が次々と起き始めた。達也はそこに粉飾の気配を感じた。棚卸し当日、公認会計士が立ち会いにやって来た。病気の今川の代理として急遽やって来たのは西郷だ。しかし、西郷が立ち会うはずの在庫数量カウントは、すでに1日前に終わってしまっていた。


 棚卸しに立ち会った西郷は、「加工費の総額を製品と仕掛品に配分する際に、それぞれの材料費を基準とするのは問題だ」と指摘した。「製品原価が歪むから正しい利益計算ができない」のがその理由。本来は「加工時間を基準とすべき」だと言う。だが、それを聞いた達也は西郷に詰め寄って叫んだ。「あなたはプロの会計士としてもっと本質を見抜くべきだ」

 「本質を見抜く…? 何を言いたいのですか?」
 西郷は達也をにらんだ。

 「あなたの言うようなテキストに書かれている理論では誰も納得しない、ということです」

 「団さん、もちろんその通りです。でも、私は今日初めてこの会社に来たのですよ。会計監査は捜査ではありません。一つひとつの事実から本質に迫る作業なんです」

 そんな悠長なことでは困る、と達也は思った。一見、何も問題がないような工場の裏側に、とんでもない作為が潜んでいることを見つけてもらいたいのだ。

 達也自身、入社して以来、この会社の不正取引を見つけてきた。そして、この1週間に起きた出来事も、不正取引の一環に違いない。

 最初は単なる石頭の経理マン程度に考えていた斑目は、実は名うての数字の魔術師だった。だが、粉飾決算を率先しているのは斑目ではない。彼にはそんな度胸も権限もないはずだ。とすると、黒幕は間中専務か。あるいは財部社長か。

 達也は、なぜ今、自分がここにいるのかを改めて思い浮かべた。

 きっかけは恩師である宇佐見教授の誘いだった。その誘いに乗ったのは、大学卒業後に就職したコンサルティングファームでの大失敗があったからだ。

 経営コンサルタントは「格好いい」職業で、しかも報酬は大学時代の仲間の倍以上だった。達也は自分の頭の良さに自信があった。学校の成績は常に上位で、成績の悪い連中がバカに見えたものだ。

 ところが、実際にコンサルタントの仕事を始めて、自分が本当は何も知らない人間であることを思い知らされた。クライアントが抱えている問題の解決策は、どのテキストにも載っていない。達也の提案はすべて裏目に出て、揚げ句の果てに会社は倒産。社長は妻を道連れに命を絶った…。

「「熱血!会計物語 ~経理課長、団達也が行く」」のバックナンバー

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「第29話 「私は、会計監査上どうですか、と聞いているのです」」の著者

林 總

林 總(はやし・あつむ)

公認会計士

外資系会計事務所、監査法人勤務を経て開業。国内外でビジネスコンサル、管理会計システム導入コンサルのほか、大学で実践管理会計の講義を行っている。また管理会計の草の根活動として、団達也会を主宰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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