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【第12回】イラクで戦う米軍女性

「女の命が男より大事だとは思わない」

2008年2月13日(水)

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 米国に1年住んで体感したのは、あらゆる分野に女性が進出していることだ。オフィスに女性管理職が多く存在するのはもはや当然。女性活用に関して議論の中心となっているのは、「女性役員やCEO(最高経営責任者)をいかに増やすか」だ。女性の大学教授は、文系だけでなく理系にも多いし、ハーバード大学のドリュー・ギルビン・ファウスト学長に代表されるように、一流大学の学長も女性が珍しくなくなっている。ちなみに筆者が住んでいたミシガン州では、ジェニファー・マルハーム・グランホルム知事も、客員研究員として所属したミシガン大学のメアリー・スー・コールマン学長も女性だった。上院・下院議員の顔写真一覧を見れば、共和・民主党ともに女性が大勢いるし、ついに大統領候補まで女性になった。

 中でも一番驚いたのは、軍隊にまで女性の進出が見られたことだ。「女性の社会進出」はリベラルの専売特許だと思っていた筆者の目には、軍隊と女性という一見ミスマッチな組み合わせは新鮮に映った。通常、「女性が戦うこと」については、リベラル派、保守派の両方が反対する。

 フェミニストを含むリベラル派は「戦争は男性が起こすもの。生命を産み出す女性は平和主義者」と主張することが多い。一方で保守派は「女性は戦いに向かない。弱いのだから男性が守ってやらねば」と考えがちだ。しかし米国の実情を見ると、このどちらの考え方も時代遅れに思えてくる。

 現在も続くイラク戦争の前線にも女性の姿がある。カーステン・ホルムステッドは、『Band of Sisters: American Women at War in Iraq』(Stackpole Books, 2007)の中で、イラクに駐留する米軍に所属する11人の女性の生の声を伝えた。彼女たちの業務は多岐にわたる。負傷した兵士の治療にあたる看護師、輸送トラックの運転手、戦車のてっぺんから頭を出して周囲をうかがい怪しい者がいれば発砲する人、そして爆弾を積んだ戦闘機のパイロット。

 いずれの仕事も死と隣り合わせだ。イラク人女性のボディチェックをしながら、相手が自爆テロをするかもしれないと警戒を怠らない女性兵士。戦闘機パイロットは、もし撃ち落とされて捕まったら、自分がレイプされて殺されることを覚悟している。こうした推測が示す通り、これまで軍隊が女性を受け入れなかったのは、敵に性的虐待を受ける可能性を考慮したためである。

女性兵士は自分たちを特別視しない

 ところが当の女性兵士たちは、こうした配慮を歓迎しない。本書には「女性兵士たちは、自分の肉体が男性のそれより大事とは思っていない」とか「父親より母親の方が大事であるということを聞きたい人もいない」という記述が、繰り返し登場する。皆、女性であることを理由に特別扱いされたくないのだ。

 戦闘機パイロットの女性は12歳の時に空軍博物館で戦闘機に魅せられ、米海軍兵学校に手紙を書く。「いつ戦闘機に乗れるか」との質問に担当者は「女性は乗れない」と答えた。その後情勢は変わり、1993年4月、国防省の決定で女性は新たに26万の軍務に就けるようになった。彼女は女子高を卒業後、米海軍兵学校に女子学生初の入学を果たした。

 このように軍隊に女性が進出したことで、犠牲者も増えた。2003年3月の開戦以来、イラク戦争での米国女性の戦死者は70人に上っている。これはベトナム、朝鮮、湾岸戦争とアフガン侵攻での女性戦死者の合計より多いそうだ。

 なぜ米軍で女性の進出が起きたのか。昨年3月にフランクリン・マーシャルカレッジ(米ペンシルベニア州)で開かれた女性問題シンポジウムで、答えの一端を知ることができた。中でも米陸軍のマーク・リンドン大佐の発表(注1)は興味深かった。彼は「優秀な人材を確保するために、男性だけでなく女性にも門戸を開くべき」と主張したのである。

 この発想はグローバル企業の人事担当役員と全く変わらない。リンドン大佐によれば、17~24歳男性の12%が軍の入隊試験に受かる素質を持つが、大半は大学に進学してしまう。また、若者のうち「自分は軍隊に入ると思う」と答えているのは15%だけだ。軍隊でも、男性だけにこだわっていては能力のある人を採用できなくなるというのだ。

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「【第12回】イラクで戦う米軍女性」の著者

治部 れんげ

治部 れんげ(じぶ・れんげ)

経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。1997年一橋大学法学部卒業後、日経BP社で16年間、経済誌記者。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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