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第8回:買収候補の絞込み、社内検討は“ほどほど”に

「カオスの淵」にいる日本-今こそ買収に向けて行動を起こせ-

  • 西村 裕二

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2008年2月14日(木)

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 「カオスの淵」をご存知だろうか?

 カオス理論において、様々な均衡点のうちどの均衡点に落ち着くかを分岐する境界のことを「カオスの淵」という。今年1月13日付け日経新聞によれば、世界の時価総額上位500社のうち、中国企業が44社を占め、日本企業の数を超えた。いよいよ日本企業は成長率だけでなく絶対額でも中国に追いつかれる時代になった。長年停滞した日本企業が再び成長するか、更に沈むか、まさに「カオスの淵」にいる。

 サブプライムによる世界的な株式市場の低迷を考えると、キャッシュの豊富な日本企業にとって、今が海外企業買収によりグローバルでのポジションを維持・拡大できる最後のチャンスだろう。

 海外企業の買収を検討し、すでにリストアップを終えている日本企業は多い。しかし、様々な理由を並べて、一歩を踏み出せないケースも多い。しかし、今こそ、全力を投入して行動を起こす時なのだ。

社内検討は、ほどほどに!-まずはアクション

 前回は、買収による事業や地域への進出の考え方と、どのように候補企業をリストアップするかについて説明をした。今回は、その企業リストを順位付けし、優先度の高い候補企業との「最初の出会い(イニシャルコンタクト)」に至るまでの流れについてお話したい。

 状況にもよるが、候補企業リストは通常100社程度必要だ。こちらから持ちかける「能動的」な買収では、先方が受け入れてくれる可能性は低いからだ。とはいえ、100社もの企業を詳細に検討するのは不可能だ。

 通常、優先度を2~3段階に分類し、優先度の高いところから先方にコンタクトをとり、詳細の検討を始める。コストやスピードを考えると、社内検討に深入りするのは禁物。さっさと切り上げ、早めにコンタクトに移ると無駄な動きがなくなり、スピード感をもって進めることができる。

 もちろんスピードがあっても、有利な交渉が後回しになってしまっては元も子もない。だから重要なのは優先度の付け方だ。実際には、どのようにして優先度をつけるか?

 これは買収の目的により異なる。再生型の案件の場合は対象となる企業単体がいかに割安か、再生できる可能性があるかにより優先度が決まる。バランスシート(B/S)、損益計算書(P/L)、コスト構造などの情報により、どのくらい企業価値を向上できるかを推定して優先順位を決める。従って、このタイプの案件では優先順位付けがある程度定型化できる。

 一方、ケイパビリティ型案件(第6回を参照)は、リスト化された企業が自社の成長戦略においていかに位置づけられるか、あるいは、自社やこれから買収する企業とのシナジーの大きさが、優先度の決定要因となる。とはいうものの、100社全ての詳細の企業プロファイルを手に入れ、各社とのシナジーを考えるのは現実的ではない。ケイパビリティー型買収では、優先度はM&Aの狙いや期待シナジーに基づいて、本当に重要かつ情報が取りやすい基準で絞り込むため、定型化できない。そこで、いくつか例を挙げたい。

優先順位付けで、5社から10社に絞り込む

 ある情報システム開発会社A社が同業の企業を買収したケースでは、100社程度の企業がリストアップされた。A社は基幹システム系のパッケージソフト開発能力を特に強化したいと考える一方で、自社が経営人材不足の状態であったため、「統合の手間がかからないこと」を、買収先に求める主要要件にした。そこで、特定のパッケージに特化し、かつ利益率が高いことという基準で絞り込んだ。会社=ひとつの事業部であり、事業そのものにも問題がないから取り込みやすい。こうして対象となる企業を5社程度に絞り込むことができた。

 前回例に出した食品会社B社が欧米企業を買収するケース。この場合も、欧米食品企業100社程度がリストアップされた。このケースでは、最低限享受したいシナジーは、買収企業の製品の日本市場での販売であった。そのため、この観点から次の3つの基準を設定した。

 1つめは、まだ日本市場には本格的に進出していない企業であること。2つめは、日本市場で売れそうな、例えば「イタリア」、「フランス」、「イギリス」、「北欧」などの国籍の企業に限定すること。3つめは、2つの条件をクリアした企業の製品が日本市場で売れるかを、商品開発担当と議論して絞り込むこと。さらに、このケースでは食品業界に詳しい投資銀行マンに売却可能性の低そうな企業を除外させ、10社程度に絞り込んだ。

 5~10社程度に絞込み、企業プロファイルをしっかり作成したら、次の4点について整理・検討する(この時点では先方と最初に会う前なので、通常、公開情報から検討する。コンタクトを開始する準備としてどのようなWin-Winのシナリオが描けるかが重要だ)。

  • 単体として現状の経営状況と将来性
  • M&Aの目的の再確認と候補企業の位置づけ
  • 候補企業はM&Aの目的に合致しているか(予算などを含め)
  • シナジー:お互いの成長シナリオを描くことが可能か

コンタクトの開始-「三顧の礼」をつくし、夢を語る

 ケイパビリティ型買収でリストにあがるような企業の社長は、一般には売却する気がないのが普通である。しかし、過小資本が成長のボトルネックになっていたり、将来的な事業継続の危機などに悩んでいる「健全な」経営者が必ずいる。また、大手企業の中でコアでない事業などの場合もある。

 例えば、先日、環境ビジネスを行う技術力のある企業C社の社長から資本提携先を探してほしいという依頼を受けた。その会社の事業領域は現在ニッチ領域だが、将来生活基盤ともなるとても大きく成長する領域だ。C社の業績は順調であり、分野が時流に乗っているため資本も集まってきている。そのような状況の中で、会社を売却する意思があるとは私にとって意外であった。まさに、実際にコンタクトしてみないとわからなかった案件だと思う。

 私は、C社の社長と、どこに売却すれば最も成長できるかを話し合った。

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