バブル経済の崩壊後、日本企業の多くがリストラの名の下に人員を削減する一方で、従来の年功序列の人事制度を改め、年齢に関係なく社員一人ひとりの業績に基づいて処遇を決める成果主義型の人事制度を取り入れた。
その結果、社員が達成しやすい数値目標の追求に走り、組織全体の業績が落ち込むといった弊害が生じている。他方、こうした事態を既に経験した欧米の企業は個人の業績ばかりではなく、組織への貢献度を評価する人事制度の構築に取り組んでいる。一部のスタープレーヤーを重用する姿勢からチームの成果を重視する方向へシフトし始めたのだ。
ポスト成果主義と呼ぶべき新たな人事制度はどのようなものなのか。このコラムでは、国内外の経営者や人事のエキスパートへのインタビュー取材を通して明らかにしていく。
初回は世界銀行の人事担当副総裁などを歴任した国際金融公社(IFC)のドロシー・ハマチ・ベリー人事・総務担当副総裁に、個人の業績から組織への貢献度へと人事評価の軸足が移り始めた理由を聞いた。
ドロシー・ハマチ・ベリー(Dorothy Hamachi Berry)氏
神奈川県鎌倉市生まれ。米ニューヨーク大学修士課程修了。米教育省などを経て1996年3月から世界銀行の人事担当副総裁。99年1月から世界銀行グループの国際金融公社(International Finance Corporation)の人事・総務担当副総裁
私は世界銀行の人事担当副総裁を務めるなど、自分のキャリアを通じて企業や組織の人事のあり方をずっと考えてきました。組織というものを研究してその成功や失敗の要因を追求し続けてきたのです。そこで最近に強く感じるのは、他人と協力する能力の重要性が高まってきたことです。
国際金融公社(IFC)を例に取って説明しましょう。IFCは世界銀行のグループ企業で、発展途上国の民間プロジェクトへの投融資を行っています。ですから、職員には金融に関するスキルが求められる。企業を財務的な視点から分析できなければならないのです。そうしたスキルがなければ、同僚から信頼を得ることはできません。
専門性が重視されることから、以前は協調性のない人でも高いスキルがあれば採用していました。「彼は素晴らしいスキルを持っている。同僚と協調して働くことができなくても問題はない。採用しよう」。これが従来の姿勢だったのです。一緒にいると心地よくない人でも構わなかった。
今ではそうした人を雇うことはあり得ません。もちろん金融に関するスキルが求められることに変わりありませんが、協調性の見られない人を採用することはない。なぜなら、我々の今の仕事のほとんどはチームによって行われるからです。職員が自分1人でできる仕事はごくわずかしかありません。
まずはチームの一員として働けることが要求されます。仲間と協力して問題の解決策を探らなければならない。そのために時には仲間と議論を戦わせることも必要です。でも、それは事態を前進させるものでなければなりません。
“和気あいあい”は協調ではない
協調が重要といっても、他人に接する態度が良いだけでは十分ではありません。世の中はどんどん複雑になり、解決しなければならない問題は山積している。そこで問われるのは、チームとして一緒に問題の解決に当たれるかどうかです。解決策を巡って意見が分かれた時に、違いを踏まえたうえで建設的に解決に向かって溝を埋めていくことが求められます。
これは簡単なことではない。なぜなら、協調とは笑顔を絶やさずにお互いに良い態度で接することだと多くの人が誤解しているからです。そうした態度は実は多くの場合、かえって有害です。問題が存在しないかのように振る舞うことにつながるからです。
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