• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

Vol.12 ブログメディアのスゝメ(その3):メディアのS字カーブに挑もう

  • 小林 弘人

バックナンバー

2008年4月14日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

前回から読む)

 セレブレティによる「誰でもメディア」は、出版(パブリッシング)におけるコンテンツの流動化をも意味します。特定企業によって、まだ書かれぬ著作から関連するコンテンツの権利までをも契約書によって囲われることなく、著者自身(コンテンツ・ホルダー)が自主独立し(この場合には情報インフラ的な意味で)、その商機を流動化させることが可能になるでしょう。

 もしかしたら著者がフリー・エージェント制をとり、毎回作品の出版化権を出版社に入札させたり(そういう著名人も実際にいました)、あるいは強力な交渉力と莫大なトラフィックや物理的な本の販売力を誇る特定のポータルサイトが、エージェント業務も同時に行なうという「新しい出版社」創出に繋がる萌芽もあるかと予測されます。

 多くの既存出版社はCGMやアグリゲーターよりも、紙のルック&フィールをそのまま模倣したフォーマットに執心する傾向がありますが、「出版」をもっと広義に解釈したとき、商機は増大するかと思われます。

ブログをただ集めたってダメだけど

 ベストセラー『ウェブ進化論』の著者・梅田望夫さん風にいえば「あちら(=ネットの話)」の話として、ウェブやブログ・メディアを捉えるのではなく、「あちら」が地続きで「こちらの話」(=紙の本を出版する)でもあるという点に気づくべきなのですが、実際にはどうも「こちら」側のメディア陣営は“存在の耐えられない重さ”に押し潰されそうです。そんななか、スターツ出版は、その領域を接合したバリュー・チェーン構築を遂げたように見えます。

 私がブログ出版を敢行する以前に(ちなみにニフティ株式会社のココログというブログ・サービスでブログを運営するフローラン・ダバディ氏の本が日本初の商業的ブログ本でした)、「ブログはタダで読めるから、本にしても読まれない」「質が低くて、使えない」と紙の編集者から批判されましたが、どの分野にも「粗雑品」や「バーゲンセール」のカゴのなかに、実はヒントというか、掘り出し物が隠されています。

 実はブログ本の前に、私が個人的にやりたかったことは、「これは良い!」という各種専門的な記事を書くブロガーのRSSを取得し、それをアグリゲートした21世紀型の雑誌でした。毎日、いや、毎時更新かもしれないそれは、編集者がライターを育てて束ねる、というまさに紙の雑誌のウェブ展開です。ブログのアグリゲーションにはその可能性があると思い、当時、元まぐまぐ開発者の深水英一郎さんにも相談をもちかけたとき、すでに深水さんは深水さんでなにかお考えのようでした。

 思うに、ブログは雑誌連載の代替として、メディア企業にとっての原材料、つまり、原稿の仕入れ先となります。仕入れと同時に、そこで著者の潜在的購買層を囲うことができるため、むしろ初版部数の読みを外さないためにも、ブログは単にコンテンツを仕入れるエンジンだけではなく、マーケティングツールとしても実践的なように思えます。

 ブログポータルサイトは、いろいろなユーザーの集積ではありますが、それをブランディング化していくためには、やはりスクリーニングという機能(人的なものか、投票などによるCGM的なものかは措くとして)や、実際に見せ方やコンセプトにおける“意図”が重要になってきます。

 米国の「FOX」というCATV局が放送する超人気番組のひとつに「アメリカン・アイドル」があります。同番組は全米からアイドルを目指して集まった若者たちが、オーディションに次ぐオーディションを勝ち抜き、最後は視聴者からの投票で1位を決めるという内容のものです。ブログやCGMインフラは「アメリカン・アイドル」のように、才能の仕入れとスクリーニングができ、さらにそんな過程からもユーザーを増やすことができるという、編集者にとっては理想的なメディアのプリプロダクション(製作準備)システムだと見立てられるわけです。

 これらオーディションならぬ、作家の書き下ろし連載を掲載するウェブマガジンは、いまでこそ珍しくありませんが、商業出版社が運営する本格的なものとしては、2002年1月10日にオープンしたバジリコという書籍出版社の手によって運営される文芸ポータルサイト「バジリコ バジリコ」がその端緒ではないかと私は考えます。

原石を仕込む試みたち

 編者が発掘したライターを集めて、記事を寄稿してもらい、市場の反応を窺いつつ、紙の本にするというフローが早くも取り入れられていました。しかし、当時としては早すぎたのでしょう。その後、同サイトはポプラ社に連載されるコンテンツの出版化権と共に譲渡され、ポプラビーチと名を変えて進化を果たしました。現在、本家のバジリコでは「だいたい月刊 バジリコバジリコ」と名を変えたものが運営されていますが、そちらは当時のものよりミニマルな印象をもちます。

ポプラビーチ はこちら
だいたい月刊 バジリコバジリコ はこちら

 また、出版事業以外では、コロムビアミュージックエンタテインメント(CME)が運営する「音レボ」というサイトがあります。こちらは新人アーティストが自分の作品をアップし、それをユーザーによって審査するというものです。新人はその勝ち抜きに残った場合、アマゾンでのCD販売やCMEからのデビューが用意されています。

音レボはこちら

 「粗雑品」だから最低だと同定する前に、最高の原石を仕込むことこそ、編集者の仕事だと思いますし、「最低」なものが集まらないよう、どういったエコシステムを構築するのか、フォーマットの設計は可変かと思います。なんでしたら、ウィキペディアのように読者からも添削や校閲、意見出しをお願いしたほうが良いかもしれません。

 本連載の最初に、これからは企業の出版社飛ばしが始まるという話をしました(「『出版』をバージョンアップする」)。

コメント0

「誰でもメディア宣言」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

プロフェッショナルとして、勝負どころで安易に妥協するなら仕事をする意味がない。

手嶋 龍一 作家・ジャーナリスト